Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    らいか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 😍 😭 😘 👍
    POIPOI 17

    らいか

    ☆quiet follow

    🌊🔮のショートストーリーです。
    初めて全年齢読めるものを書きました。
    飲酒雑談に乱れる心を落ち着ける為に。
    タイトルはkeshiのbeside youより。

    #suuki

    beside you 眠る時に君の声を聞いていたい。君の歌が聴きたい。だけど…ああ、最大の難関がある。この歌は本当に好きだし、君を好きになる前は、何ならエモいとすら思っていたんだ、同期のナレーションなんて。私には完全な同期というのは今はもういないし、羨ましくて微笑ましいなと思っていたのに。それに一つ、認めたくないことがある。私の声より浮奇の声より低いこと。ハスキーでスモーキーで特徴的。正直に言えば、めちゃくちゃ悔しい。
     だからって、もう一曲の方だと…あの男はサビを歌っててセンターにいる。無理。むかついて眠れなくなるよ。そもそも眠る時に聴くような曲でもないし。
    「ねえ浮奇…お願いがあるんだけど」
    「なに?」
     コーヒーとチョコレートをつまむだけの通話。私と浮奇の中で、定番になりつつあった。
    「déjà-vuの…歌だけってないの?」
     浮奇はキョトンとして、それからいつもの深い声で笑った。
    「スハ可愛い。俺以外の声が嫌なの?」
    「…浮奇の声で眠れたらいいなって思っただけだから」
     名前は出さなかったのは浮奇なりの優しさだ。君があの男を何て呼んでるかなんて、周知のことだしね。
    「うーん…あるにはあるんだけど、ごめん。他の人にはあげない約束をしちゃってて」
     一瞬、びっくりするくらい胸が痛くなった。心臓の場所が、嫌でも分かった。
    「そっか…仕方ないよね。そういう約束を守るところも好きだよ」
     これが、私の精一杯の強がりだった。諦める気はさらさらないけど、変に卑屈になったりはしない。常に戦略が必要なんだ、敵は両手の指でも足りない上に、何なら増えた。おまけに、最大の敵までいるんだからね。
     浮奇は右手の人差し指をトントンと唇に当てて、私を見た。
    「それにさ、あのデータはあの歌の世界観をイメージしてもらえるように歌ったものなんだ。スハなら分かると思うんだけど、世界観や感情を表現する為に歌う時と、曲の内容は関係なく今出したい感情を乗せて歌う時とあるから…」
    「うん、分かるよ」
     波が揺蕩うオッドアイが一瞬、伏せられた。少し照れたように。
    「もしスハが、眠る前に聴いてくれるんだったら、スハがよく眠れるように、夢の中でも俺がスハに会えるように…そういう気持ちで、スハの為だけに歌うから、それじゃダメ?それを録音してあげるよ」
     さっきは痛みで分かった心臓の場所に、甘いときめきが満ちていく。同じ場所が痛むのに、辛いときと甘いときがあることを、私は初めて知った。
    「浮奇…」
    「あ、それとも、一緒に歌う?スハが上で、3度か5度ハモリとか。こないだのセフィナとのカラオケ、スハが上でハモったのすごくかっこよかったな…」
     イタズラっぽく笑われると、もう私はどうしたらいいのか分からなくて。
    「スハの声と歌が本当に大好き。スハが他の人に合わせて歌うのが上手なのは、優しい人だからだって思うよ。尊敬と…ちょっとヤキモチ妬いちゃうけどね。スハは染まりやすい人。気を付けてね」
     キラースマイル。本当に殺されそう。今、一番私を染めている癖に。私は両手で顔を覆った。
    「浮奇、ちょっと待って。私…いま、すごく…恥ずかしいって!」
    「あはは、可愛い。それで、どっちがいい?俺が歌うのと、二人で歌うの」
    「…両方に決まってるでしょ」
     浮奇は楽しそうに頷いた。顔を覆った指の隙間から、紫色の木漏れ日が私の心を温かく照らす。
     歌詞を変えて歌った男の存在は、一旦忘れてあげる。あいつに出来なくて、私に出来ることを教えてあげる。いくらでも。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💘💘💘💘💘💘💘💘😭💕😭💕😭💕😭💕😭💕🙏😭💘💘😭😭❤❤❤💖💖💖🙏💖💘😭👍
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    setsuen98

    DONE🌊🔮♀。大学生×社会人。
    過去あげた大学生×社会人のシリーズですが、これだけでも読めます。ですが良ければそちらも読んでみてください。
     先週のデートの際スハがそわそわとしながら手渡してくれた箱の中に収まっていたのは、うっかり指を引っ掛けでもしたら千切れてしまいそうなほど華奢なシルバーチョーカー。
    チャームも何も無いシンプルなデザインながら、フリルのような繊細な動きのあるチェーンはそれだけで上品に存在感を放ち、どんな服装にもマッチするセンスの良い品だが、箱を開けて真っ先に浮かんだ言葉は「誰と選んだの?」だった。ファッションやアクセサリーにそれほど興味がないスハが選ぶとしたら、シンプルなものだとしても何かしらの石やモチーフがついた無難とも言えるネックレスを選ぶはず。彼が一人で選ぶには、デザインが洗練されすぎていた。
     流石にスハのセンスじゃないでしょ、なんてそのまま問うなんてことはせず、オブラートに包んで包んで、それはもう遠回しに訊けば大学の友人達と出かけた際ショップについて来てもらいアドバイスをもらったのだと言うが、「その時に教えてもらったんだけど、チョーカーって“傍にいてほしい”って意味があるんだって」と伏し目がちに照れながら口にしたスハに、そのメンバーの中に女がいたことを確信して問おうとした矢先に続けられた「あと、彼氏がいますって印になるって聞いて……着けてくれる…?」と、私よりも背が高いにも関わらず器用に上目遣いで見つめてくる年下彼氏の可愛さにやられて、もういいか、という気になってしまいイチャイチャタイムに突入した、というのがその時のハイライト。
    3139

    setsuen98

    DONE🌊🔮。芸能人×メイクさんパロ。
    まだ付き合ってない二人です。
     大きな鏡に写る自分の顔を見れば、あまりに不格好な表情に苦笑が溢れる。無意識に眉間に力が入り平素に比べ険しい目元に反して、口元はスタンプを押したようにわずかに口角が上がったまま。デビュー当時から、基本的にいつでも笑顔で、と口酸っぱく言われ続けた教えに忠実に従う自分の表情筋が今は恨めしい。
     デビューしてから駆け抜けてきたこの数年、自分なりに努力を積み重ねてきたおかげか、歌だけではなくテレビ出演や演技など、様々な仕事をもらえるようになった。有難いことに熱心に推してくれるファンもつき、かつて夢見た姿に少しずつではあるが近づけている。それなのにどうにも自分は欲深いようで、同じ事務所の後輩たちがデビューするなり順調すぎるほどのスピードでテレビやステージなど華々しい活躍を見せる度、劣等感と羨望が溢れどうしようもない気持ちに苛まれ、手のひらに爪が食い込むほどに握りしめそうになるのを堪えてすごい!と手を打ち鳴らす。そんな自分の姿が滑稽で醜くて、後輩たちに合わせる顔もなくなって、思考が自己嫌悪で埋め尽くされる。そんな気鬱が続く時がたまにあり、今まさにそんな気持ちを抱えながら雑誌撮影のためにメイクルームに入れば鏡に映るのはこの様。思わず項垂れ、少しでも胸中がすっきりしないかと大きく長く息を吐く。
    3790

    recommended works

    re_deader

    TRAINING #Fukuma #Psyborg #Shugur

    結婚する👹🐑と片思いの🔮と👟の独白/女装有り
    ふちゃにただ黒無垢を着せたかっただけなのでパッションだけで書いた散文
    Lotus今日、ふーふーちゃんが結婚する。
    控え室のドアを二回ノックすると、向こう側から入っていいぞと声が返ってくる。いつもと変わらない大好きな声。ドアを開けるとそこには着付け前のふーふーちゃんが椅子に座っていて、真っ白な襦袢を着たその姿に言葉に詰まってしまったのを誤魔化すために微笑んだのだけど、上手く表情を作れていたかはわからない。
    オレはふーふーちゃんのメイクを任されている。オレじゃなくても他にメイクが上手いメンバーもいるし、なんならヘアメイクだって付けれるはずなのに、ふーふーちゃんは「浮奇にしてほしい」と言ってきた。嬉しくて、でも少しだけ残酷だなって思ったのは内緒だ。
    ふーふーちゃんの肌は人形みたいに真っ白だから、余計なものは必要ない。化粧水と乳液をぱぱっとつけてあげて、下地を塗ってから薄くファンデーションを伸ばしてあげるだけで充分だ。オレなんかいっぱいスキンケアしてるのに、本当に羨ましいったらない。ぱたぱたとパフでお粉を叩いたら、次はアイシャドウ。どの色にしようか迷って、やっぱり赤かなと手に取る。赤はふーふーちゃんと、あいつの色だ。
    3364