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    15saihasaikou

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    15saihasaikou

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    ジョンドラ🐚🐙
    なんちゃってファンタジー世界
    人間として生まれた〇×魔女ド♂
    ⚠️ドが陽の光を浴びても生きてる いろいろ都合いい えちが無い

    #ジョンドラ
    jondra

    青年の願いを叶える対価として魔女は永遠を求めた ――声をだしてはいけないよ。これからずっとなにがあっても声をだしてはいけない。もし声をだしてしまったら、人魚姫みたいに、魔女に声を奪われてしまうからね!

     とある国の少年はそう言い聞かされて育ちました。やわらかい茶髪にやさしげな細目をもつその少年は、不幸なことに幼いころ家族と離れ離れになり、血のつながらない人々によって育てられていました。
     魔女についての真偽は不明でしたが……、少年のまわりにいるのはあまり優しい人々ではなく、少年は生き残るために、彼らの言うことを聞く必要があると判断していました。そのため長いこと声を出さずに生きていました。

     だから有事にあっても声を出すことができませんでした。それは少年が大人たちに連れられて、生まれて初めて船へ乗ったときのことでした。天気が急に悪くなったかと思うと、波がおおきくなって、船を呑み込もうとしはじめたのです。大人たちは我先にと緊急避難用の転移魔法陣のところへ走り出しました。少年も後に続こうとしました――が、横転しかけていた船へ入り込んでいた海水に足をとられて、転んでしまったのでした。

     少年はそのまま海へと投げだされてしまいました。叫び声ひとつあげられませんでした。前を走っていく大人たちへ、助けを求めようとしたのですが、あまりに長いこと声を出さずにいたために、叫び方を忘れてしまっていたのです。

     冷たい海にざぶんと呑み込まれ、死という文字が頭をよぎりました。しかしそのとき手をなにかぬるっとしたものが掴みました。少年が掴んだのではありません。そのぬるっとした長いものが少年の手を掴み、きゅっと吸い付いてくるようななにかによって、荒波にちいさな体が攫われるのを防いでいたのでした。

     未知の体験でしたが、不思議と恐ろしくはありませんでした。少年は急に安心して、それに身を任せると、ふぅっと意識を手放したのでした。


     ――ふん。なるほどね、そういうことか。この子のまわりにいる人間はちょっとばかし小賢しいようだ。けっして賢人とはなれないせいで大切なものを失いかける。哀れだね。

     少年はそんな声を聞きながら目を覚ましました。視界に飛び込んできたのはうつくしい夜空でした。雲ひとつない、手の届かぬところで輝くミルキーウェイ。それは人工的な灯りに囲まれた国では見ることのかなわぬ煌めきでした。その脳裏に刻み込まれるかのような光景に少年はぽかんと口をあけました。

     ――目が覚めたのか。痛いところはないかい。もしくは、寒いとか。

     声をかけられようやくミルキーウェイから視線をはずした少年は、ますます驚きました。そこには星々を織り込んだように煌めく夜空色のフードを身にまとった異形がいました。顔は人間のように見えるのに、服の裾からは蛸足がのぞいていました。蛸足はうねうねと各足が好き勝手に動いており、つくりものではないことがわかりました。……ばけもの。……魔女? 少年の頭に大人たちの言葉が蘇りました。――声をだしてはいけないよ。

     少年は茫然と異形を見つめました。いろいろなことが起きすぎて思考が停止してしまったのでした。異形はなにも急かすことなくやさしく少年を見つめかえしました。穏やかな波の音だけが耳に届きます。しばらくただ見つめ合う時間が過ぎました。

     ……ざざん。ざざざん。

     やがて、少年の停止した思考はゆっくりと動きはじめました。視線をそろりと動かして周囲を確認すると、少年がいまいるのは、小舟のうえでした。ちいさな湖で乗るような頼りない小舟に、毛布とタオルに包まれて座っていました。痛いところもなければ寒さも感じません。海へと落ちた記憶はしっかりあるのに、なぜだか服も体も濡れていなかったのでした。渇いている茶髪をさらりと海風が撫でていきました。

     異形はすこし離れたところに浮かんでいました。星空模様のうつくしいフードが夜の海にゆらゆらと揺れ、蛸足が気持ちよさそうに波とたわむれていました。荒波から助けてくれたのはその蛸足である気がしました。少年は、それを尋ねてみたくなりましたが、また大人の言葉が蘇ってきました。――声を奪われてしまうからね!

     ……どのみち少年は声の出し方を忘れてしまっているのでした。喉を撫でながら少年は目を伏せました。この状況にあってようやく少年は気が付きました。声を奪われるからずっと声を出してはいけないということの矛盾。どちらにせよ声を出すことはできないこの状況。少年にとっての魔女あくまとは、目の前にいるこの異形と、周囲にいた大人たち、どちらのことなのでしょうか?

     ――君、人魚姫の話は知っている?

     異形にやさしく声をかけられて、少年は顔をあげました。なにか答えるよりも前に異形は人魚姫の昔話をはじめました。むかしむかし、人間の王子に片思いした人魚姫がおりました、と……。異形の声は夜になじむ低音で耳心地がよく、話し方も上手でしたので、少年は話に引き込まれました。

     ――こうして人魚姫は王子さまと結ばれましたとさ。めでたし、めでたし。

     少年はおどろきました。人魚姫についての伝説は、声を出すことを禁じた大人から聞いたことがありましたが、その話と、異形が語りかけてくれた話は、話の雰囲気から終わり方まで異なっていたのです。

     少年が以前聞いたのは、王子さまに片思いした人魚姫が魔女につけこまれて声を奪われ、激痛が走る足を与えられたあげく、恋が成就しなかったために泡になるという、可哀想なお姫さまの不幸な物語でした。
     そしていま異形が話したのは、恋をした人魚姫が果敢にも魔女と交渉して陸にあがり、王子さまとも結ばれて、人間として幸せに暮らしたという、行動力のあるお姫さまが幸せになる物語でした。

     どちらが正しい話なのか、あるいはどちらも間違っているのか、少年には判断ができません。しかし少年としては、お姫さまの行動力のつよさが光る話のほうが好みでした。

     ――それでね、君は人魚姫と王子の子孫なんだと思うよ。

     異形はそう言葉をつづけました。とうとつな内容に、少年はまたぽかんと口を開けました。

     ――君の声には海の仲間……、我々を呼び寄せる魔力がある。声をださずともなんとなく君が海へやってきたのがわかったくらいだ。それでたまたま君が海へどぼんと落ちてきたのを見かけて助けることができたんだよ。……そしてここからが本題だ。私は魔女の末裔ドラルク。魔女とは取引をするから魔女たりえる。事後承諾でわるいけれど、君を助けたからには、対価を頂かなくてはならない。

     異形……ドラルクの話を聞いて少年に呑み込めたのは、対価を渡す必要があるということだけでした。少年は頭を下げて、助けてもらった感謝の気持ちと、対価を差し出すことの了承を示しました。

     ――良い子だ。それに勇敢だね。ただ、今後はなにを差し出すのか聞いてから了承したほうがいいよ。私は拒否されても頂くがね。……さぁ、君から貰うのは、声だ。海の仲間を引き寄せるその魔力だ。ここにサインを……、ああ、いや、血判を貰おうかな。この針にちょこっと指を乗せて……、そう、それでここに指を押し付けて……。はい、契約成立。

     ドラルクが服の中から取り出してきた紙(不思議と濡れてはいませんでした)に言われるがまま血判を押すと、なにやらずらずらと文字が連なっているその紙はきらりと金色に輝きました。ドラルクは満足げにうなずくと紙をくるくるとまとめて懐にしまいました。

     契約成立、とドラルクは言いました。ということは人魚姫のように声を魔女へ譲渡したということなのでしょうか。少年は不思議に思ってまた喉をさすりました。

     と、その手に丸いものが触れました。ちいさくてつるりとした丸いものが、喉をさすった手にぽろりぽろりといくつか現れます。少年はあわてて両手をつかい、それが落ちないように持って、まじまじと見つめました。

     丸いものはシーグラスが玉のかたちになっているもののように見えました。赤と黄が入り混じったような不思議な色合いをしていました。少年はなんとなく林檎を連想しました。それが少年の年齢の数だけ手のひらのなかにありました。

     ――この瓶へ入れて。

     蛸足が空の瓶を差し出してきました。言われるままにすべて瓶へいれると、ドラルクはとても嬉しそうににっこり笑って、それを頭の横へ引き寄せました。

     ――これで君の声は私のものだ。綺麗な色だね。かじったら林檎の味がしそうだな。なんて、かじらないけども。……おや、笑った。

     林檎という同じ連想をしていたことがなぜか嬉しく思われて、少年は微笑みました。笑ったのはずいぶんと久しぶりのことだったので、頬がひきつって、いびつな笑いになりました。少年はすこし恥ずかしくなって口元を押さえましたが、ドラルクは変わらず、嬉しそうに少年を見ていました。

     ――そうだな。おつり・・・ということでこれもあげよう。……あんまり綺麗だと悪い大人に目をつけられるかな。ちょっと汚して……、と。

     ドラルクは服のなかから今度は袋を取り出しました。そこにはつやつやと輝く銀貨や銅貨がたくさん入っていました。ドラルクが蛸足をひとふりすると、それらは輝きを失い、路地裏の子どもが命がけで握りしめていたかのような、貴族は手も触れなさそうな汚れがついていました。

     ――さぁ、これを持って、陸へお戻り。困ったときは袋のなかのものを使ってうまく生き延びるんだよ。

     ドラルクは蛸足で袋を差し出してきました。少年は袋を受け取ると、そのままその蛸足を、そっと握りしめました。

     ――大丈夫だよ。君は賢くて勇敢だ。人魚姫のように幸せになれるとも。……いってらっしゃい。

     ドラルクの声はやさしさに満ちていました。荒波から助けてくれたときからずっと、ドラルクは少年にやさしくしてくれました。

     少年は蛸足にそっと唇を落としました。王子さまがお姫さまにそうするように。

     少年にとってドラルクこそが、王子さまを嵐から助けた人魚姫でした。

     ……ざざん。ざざざん。

     蛸足を手放すと、小舟はゆっくりと動き出しました。小舟は操縦せずとも確かな目的意識をもって動いていました。少年はずっとドラルクを見つめていました。ドラルクもずっと少年を見つめていました。見つめたままふたりは離れていきました。

     離れるにつれちいさくなっていくドラルクは夜闇にまぎれてすぐに見えなくなり、夜の海にたゆたう星屑のひとつになってしまいました。とつぜん胸を鷲掴みにされたかのような悲しさと苦しさにおそわれて、少年はしくしくと泣き出しました。その涙も海に呑み込まれ、なにごともなかったかのように、消え去っていきました。


     ……太陽が水平線から姿を見せるころ、小舟は陸へとたどり着きました。少年はもといた場所に戻りました。大人たちはたいそう驚いて、あれこれ質問攻めにしましたが、少年はもちろん無言でいましたし、うなずくことも首をふることもしませんでした。

     大人たちはやがて少年が声を失っていることに気付いたようでした。なにやら激怒したり喧嘩したりしはじめて、いろいろなことを大人同士で話しはじめました。それを聞いていると、なぜ彼らが少年に声を発することを禁じたのかがわかりました。どうやら少年の声に魔力があり、海のいきものを引き寄せる力があるということを彼らは知っていて、それを利用して人魚の密猟をしようとしていたのです。彼らの思わぬところで呼び寄せられては狩りがうまくいかないかもしれないので少年に声出しを禁じ、準備がととのったら、驚かすなどして無理やり声をださせるつもりだったのでした。

     彼らにとっての価値がなくなった少年はぽいと追い出されました。少年にとっても彼らといることに価値を感じませんでした。それを確認することができたので、少年は思い残すことなく、旅にでることにしました。


     永い永い旅がはじまりました。ドラルクからもらった袋のなかのものを大事に使いながら、そして旅の途中で出会った親切な人々に助けられながら、少年はなんとか旅をつづけました。

     旅の途中で少年は青年になりました。幸運なことに生き別れとなっていた家族と再会することもできました。しかし青年は旅をやめませんでした。家族とは文通をしながら、海のうえを、さまよいつづけました。
     ドラルクに会いたかったのです。旅の目的はそれでした。――人魚姫は陸にあがって王子さまを探しました。青年は海へもどってドラルクを探したのでした。


     あるとき、青年は怪しげな船を見つけました。それは知り合いの商船に乗せてもらうかわりに船のうえで忙しく働いているときのことでした。なんとなく見覚えのある、しかしすっかり薄汚れた船が、無遠慮なうごきで商船のよこを通り過ぎていったのでした。どこで見たのだろうと首をひねり、しばし考えて、思い出しました。その船はかつて青年が少年だったころ声を出すことを禁じた大人たちが乗っていた船でした。

     嫌な予感がして船を見つめると、甲板に檻のようなものが布が被せられて置かれていることに気が付きました。嫌な予感がますますふくれあがり、青年は商船の長に身振り手振りで非常事態を訴えました。それを見て、青年を気に入って孫のようにかわいがってくれている船長は、緊急用の転移魔法陣を使わせてくれました。魔法陣は任意のひらけた場所に転移することができるものでした。青年はそれを使って薄汚れた船の甲板へと飛び降り、さっと布を取り外しました。

     はたして、そこには異形がいました。かつて星空のように煌めいていたフードは太陽のもとでは輝きを失い、だらりと垂れ下がって蛸足を覆っていました。ひどくなつかしいその顔は、うんざりげんなりという風に、退屈そうにゆがんでいました。その目がうっとうしそうに青年をとらえ……、そして、輝きました。

     ――なんだ、いるじゃないか。もう出て行ったって聞いたのに。

     青年が永いこと求めて止まなかった声がそう紡ぎました。

     まわりは喧騒に包まれました。どこかで聞いたような大人たちのだみ声が青年を責めたて、取り囲みつつあるようでした。しかし青年にその言葉はまったく届きませんでした。構わず檻の扉を開けてドラルクを連れ出そうとしましたが、南京錠がかけられていて、がちゃがちゃと金属音が鳴りました。

     ――ああ、いま開けるよ。

     ドラルクはこともなげにそう言いました。蛸足をひとふりすると、すぐさま南京錠ががちゃりと落ちて、周囲にいる大人たちがどよめきの声をあげました。青年はドラルクを抱き上げました。お姫様相手にするように、うやうやしく。

     ――よし! さっさとずらかろう! 海へ飛び込んで!

     楽しそうな声に従って青年は駆け出しました。迷いのないその動きに誰もついていけませんでした。青年の足は力強く船を蹴り、ざっぷーん! と海へ飛び込んだのでした。

     海へ飛び込むのと同時に青年は透明な膜のようなものに包まれました。その膜は海水を通さず、息をすることもできました。海のなかでも目をあけていられるので、うつくしい海の光景を見ることができました。色鮮やかな魚が尾びれを誇らしげに揺らし、珊瑚が陽の光をうれしげに浴びていて、その合間を足の長いカニが高速で通り過ぎていきました。

     ――ああ、えらい目に遭った。でも目的は達成したな。おおきくなったねぇ。

     青年は腕のなかにいるドラルクへ視線を戻しました。ドラルクは記憶の通り……、と言いたいところでしたが、青年はだんだんドラルクの記憶が薄れていくのを感じていて、それをとても辛く思っていました。しかしあの時出会ったドラルクそのひとだということが青年にはわかりました。記憶が鮮やかによみがえりを果たして、泣き出しそうになりました。

     ――君に会いたくてあの船に乗ったんだ。ずっと我慢していたのだけど、遠くから一目だけでもと思って来てしまったんだよ。君は陸のいきものなの、に……、

     つづきの言葉は青年の口のなかへ呑み込まれました。生まれて初めてする口付けは、かつて蛸足にしたときと同じ、海の味がしました。

     ドラルクはぽかんとしていました。かつて少年が思考停止していたようにドラルクは何も考えられないといった表情をしていました。あのときドラルクが待ってくれたように青年も待ちました。しばらくただ無言で見つめ合いました。

     ふたりはどんどん深い海のほうへと流れていっているようでした。太陽の光がだんだん遠くなり、周囲は深い蒼に包まれました。ドラルクの身にまとうフードが星の煌めきを取り戻した頃、ようやくドラルクは動きました。対価をもらうよ……、とつぶやいて、青年の唇を唇でふさいだのでした。

     青年はつよくつよくドラルクを抱き締めました。もう二度と離れるつもりはないということを行動で示したのでした。ドラルクはそっと、青年の背に手をまわして、抱き締めかえしました。


     やがて陸にはふたつの噂話が流れました。ひとつは、海の魔物にたぶらかされた青年が子どものころお世話になった人間を裏切ったあげく、海へと引きずりこまれてしまう不幸な話です。もうひとつは、人魚姫に恋をした青年が人間の姿を捨て、お姫さまを守るための硬いからだをもったシャコガイとなって海で暮らしたという、行動力のある青年が幸せになる話でした。

     どちらが正しいのか、それともどちらも間違っているのか、陸のいきものには判断できません。しかし時おりシャコガイと手紙のやり取りをする一族が確かに存在するのでした。
     その手紙には、長い長い名前が記載されていたということです。


    ヌン
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    DONEあなたは6RTされたら「お前は俺にとって光だ」の台詞を使って逢河のジョンドラを描(書)きましょう。
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    という結果が出たので書きました。
    お城引きこもり時代のジョンドラ。
    【ジョンドラ】貴方に捧ぐ台詞 映画を観ていた。
     ジョンリクエストの、所謂ロードムービーというやつだ。旅の道中、様々な出会いと別れが繰り広げられる。ジョンがおすすめするだけあって、面白い映画だった。アクションも、脚本も、キャストやカメラアングル、映像編集にCG技術と、文句の付け所がない。
     なのに私は眠気に襲われ、うっかりほんの少しだけうたた寝をしてしまったら、もう話について行けなくなった。何か感動的な出来事が起きたようなのだが、肝心なところを見逃したせいで、どうにも感情移入出来ず、ただ淡々と流れていく景色を眺めるだけとなる。
     いや、そもそもだ。この少年は何を経て、何を知り、どこへ向かうのか。その不安も期待もいまいち理解出来ず、最初から大して集中出来ていなかったのだと思う。
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