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    はねた

    @hanezzo9

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    はねた

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    新邪馬台国御一行さまに夢を見ています。
    あいかわらずあたりまえのようにクコみつがカルデアにいます。

    #卑弥呼
    himiko
    #fgo
    #石田三成
    mitsunariIshida
    #クコチヒコ
    izuThrush
    #壱与
    ichiAnd
    #エミヤ
    emir

    ある日の光景 食堂は賑わっていた。
     かちゃかちゃという皿やスプーンの触れあう音、ひとびとの笑い声、鼻をくすぐる香辛料の匂い。
     なごやかな空気のなか、エミヤは厨房でひとり皿を拭いていた。
     昼をすこし過ぎた頃合い、ようやく注文も一段落したところだった。
     昨日マスターとローマの屈強な一団が微小特異点で小山ほどもある巨大な牛をしとめてきた。ゆえにきょうのA定食はぶあついステーキ、B定食のビーフシチューともども瞬く間にはけてしまって、ありがたいことにいま冷蔵庫は空っぽとなっていた。
     焼けた肉の香ばしい匂いがまだあたりに漂っている。厨房越しにみなの満足げな顔をながめ、よいことだとつられて笑みを浮かべかけたところで、おやとエミヤは首をかしげた。
     食堂のなかほどにある4人がけのテーブル、ほかほかと湯気をたてるビーフシチューを前にして少女がひとりなにやら盛大に顔をしかめていた。
     最近カルデアに来たばかりの少女で、たしか名を壱与と言った。日本古代の産らしい、そのいでたちはかたわらでもぐもぐと白米をほおばる卑弥呼ともよく似ている。
     テーブルを挟んだ向かいには獣頭の武人がいて、壱与はどうやらその男に胡乱なまなざしを向けているのだった。
    「クコチヒコさん、三成さんにお肉あげたんですね」
     クコチヒコの手元にはA定食が置かれている。壱与がしめすとおり、そこにあるはずのステーキの三切れほどは隣に座る三成の皿に移されていた。
     壱与の指摘にクコチヒコはふむとうなずいてみせる。
    「三成は細い。もっと食べねば」
     その言に、壱与の目がすっと細められる。じっとりとしたそのまなざしにクコチヒコが怯む。
    「えー、サーヴァントってごはん食べても食べなくても体型変わらなくないですかー? クコチヒコさんわたしにはちょっとアレな生肉ばっかり食べさせたくせに三成さんにはおいしいお肉あげるんですねー」
     ふーん、そうですよねー、そっかーおふたりはおともだちですもんねー、へーへーへー、と盛大に頬をふくらませる少女にクコチヒコはたじろいでいる。なぜ壱与に絡まれているのかわからないらしい、むむ、と顔をしかめているのはそれでも王としての威厳を保とうとするものか。
     壱与たちの背後の席では時計塔の魔術師とその義妹とがなにやらやりあっていて、古今東西うまれたところは違えどみな似たようなものなのだなとエミヤはひとり感心する。
    「わかった。ならば壱与、おまえにもやろう。さあ、肉を食え」
     クコチヒコがため息をつきつつ壱与の皿の端のあたりに肉を一切れ置く。ビーフシチューにステーキを混ぜるのはやめてほしいんだが、というエミヤのつぶやきはおそらくだれに届くこともなく食堂の喧騒にまぎれてしまう。
     クコチヒコからの譲与に、しかし壱与は感謝をのべることもなくじっと皿をみつめていた。
     と、ビーフシチューになかば沈んだステーキを箸でつまみ、ぽいと口のなかに放りこむ。
     クコチヒコからもらった肉を綺麗にたいらげたあとで、壱与は箸を握りしめたまま深いため息をついた。
    「さすがカルデアの食堂で調理されたお肉……おいしい……まったりとしてしかもしつこくない絶妙の焼き加減……でもこれクコチヒコさんがくれたお肉なんだよなあ……うう洞窟のトラウマがよみがえっちゃう…」
     うーんトラウマだよーと唸り続ける少女に、どうしろと言うんだとばかりクコチヒコが天を仰ぐ。
     と、そのかたわら、それまで無言だった三成がおもむろに立ちあがり、みずからの皿を壱与のまえに置いた。
     ほえ? と瞬く壱与と、なにごとかという顔をするクコチヒコに向かって三成は淡々と言う。
    「クコチヒコ、おまえの親切はありがたい。だがこの三成は神の教えを受けたもの、ましてこのカルデアには聖女や聖人、信仰を持つ方々が多くおいでになる。私がなまぐさを口にするわけにはいかん」
     いましも食堂の一隅で昼ひなかから賑やかに盃をあおり肉を食らっている聖人や聖女が三成には見えていないのだろうか、そもそも日本のキリスト教観って仏教に寄りすぎてないか、あとなんでもいいから冷えるまえに食べてくれというエミヤのつっこみと願いをよそに、きまじめな戦国大名と弥生の武人とは滅びの巫女の皿に肉を積み上げてゆく。
    「やったー三成さんがお肉くれたー、ありがとうございます! ほら見て見てクコチヒコさん、三成さんがお肉くれましたよークコチヒコさんはもらいました? あ、わたしだけ? へっへーん、残念ですねクコチヒコさん、わたしが三成さんのお肉もらっちゃいますからねーまあもとはクコチヒコさんのお肉ですけどねー」
    「……壱与、だからそんなに肉が好きなら吾のもやると」
    「えー、だってクコチヒコさんから直接お肉もらうのトラウマなんですってば、あっ、じゃあ泡ジュース! 泡ジュース飲みたいなー、うん、泡ジュースかな!」
    「泡ジュースとは何だ」
    「えーとシュワシュワしてて金色で、ちょっと苦くて、あ、噂によると麦からできてます!」
    「麦……米とは違うのだな」
    「あっ、なになに農作物の話? よくわかんないけど混ぜて混ぜてー。あのね、麦ってね、見せてもらったことあるけど狗奴国の風土に合いそうなのよねー、邪馬台国でお米つくって狗奴国で麦つくらない? 農産物さいこー!」
    「さっすが卑弥呼さま、そしたら毎日泡ジュースが飲めますね!」
     わいわいと楽しげに掛け合いを続ける少女たちを前に、クコチヒコが深いため息をつく。そのかたわらでは三成が、泡ジュースとやら長浜でつくれそうだなと真顔で算段を立てている。
     まあなんにせよ仲良きことは美しきかなだな、そうひとりごち、エミヤはふたたび食器拭きに戻ることにしたのだった。
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