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    おもち

    気が向いた時に書いたり書かなかったり。更新少なめです。かぷごとにまとめてるだけのぷらいべったー→https://privatter.net/u/mckpog

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    おもち

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    PsyBorg。新衣装寄りのイメージでいちゃいちゃ。わりと🔮🐏。

    #PsyBorg

    昨日の浮奇の配信がいつもより長かったことはアーカイブに表示される数字を見れば明らかで、開始時間から考えて眠ったのは朝方、もしかしたら俺が起きるほんのちょっと前くらいだったかもしれなかった。
    朝食と散歩を済ませて配信を始めるまでの間の時間、俺は寝室に戻ってベッドの上で丸くなる浮奇を見つめた。浮奇が丁寧に手入れをして伸ばしていた髪はもうすっかり長くなって、シーツの上に広がるそれを見ていると少し鼓動が早くなる。一房持ち上げて指先に巻きつけ、柔らかなそれにそっと口付けた。ぐっすり眠って体と心を休められるようにと、祈りを込めて。
    浮奇にふーふーちゃんも似合うと思うよと勧められるまま俺も髪を伸ばしてみてはいるが、浮奇のように毎日時間をかけることはなかなかできず、昨日もドライヤーをせずに寝てしまったせいで爆発したような寝癖がついていた。適当にひとつに結べば誤魔化せるのはいいけれど配信をやるには気が抜けすぎている。
    浮奇を起こすわけにもいかないし、俺は一人で洗面所に向かい鏡の前に立った。髪の上半分は後ろでギュッと結んでしまって、下半分はヘアアイロンでまっすぐに直す。ただストレートにするだけなら髪が短い時もやっていたから一人でも案外なんとかなるものだ。
    見れなくない見た目になったことに安心し、棚に置いてある浮奇のヘアオイルを少しだけ借りる。嗅ぎ慣れた甘い匂いのはずなのに自分につけると違う感じがするから不思議だった。それでもかすかに浮奇の気配を感じられるから、時々こうして拝借している。
    今日の配信はどのくらいやろうか。考えておいてもゲームが楽しければ夢中になってどんどん時間は伸びてしまう。浮奇をしばらく寝かせておきたいし、浮奇が起きるまでに終わらせればそれでいいかな。パソコンをつけて準備を進め、配信開始のボタンを押す。始まってすぐに時計は頭から消えてしまっていた。

    ドアをひっかく音に気がついたのはたまたまだった。ゲームを終わらせた後の雑談の時間で、チャットのコメントに対してBGMを消して言葉を返す。ちょうどその時にカリカリと音が聞こえ、俺はコメントを見ている風にしながらヘッドホンを少しだけ外して扉の外にある気配へ注意を払った。かすかな猫の鳴き声と、低く囁く人の声。どうやら浮奇はもう起きていて、扉にイタズラをする猫を宥めてくれているらしい。
    俺は配信に意識を戻し、不自然にならないようさりげなく終わる方向へ話を進めた。いつもの流れで終わらせて配信を切る。ついでにパソコンも電源を落としてすぐに部屋を出た。
    リビングに向かえば浮奇はソファーに座ってコーヒーを飲んでいて、その膝の上では猫が二匹眠っていた。ドッゴまで彼のすぐ横で丸まっている。
    「おはよう浮奇、そんなに囲まれてて暑くないか?」
    「おはよう、ふーふーちゃん。配信お疲れ様。あったかくて落ち着くよ。みんな寝てて可愛いしね」
    「まあ、大人しく寝ていると可愛いというのには同意する。……よく眠れたか? 今日の予定は?」
    浮奇は出かける予定がある時はコンタクトをつけていることが多いけれど、今日は眼鏡をかけている。フチの細い丸眼鏡は浮奇によく似合っていて、はっきりと伝えたことはないけれど俺は眼鏡をかけた浮奇がとても好きだった。ゆるい部屋着と合わさるとオフのリラックスした様子が見てとれて安心する。
    俺が近づくとドッゴはパチッと目を開けて浮奇の隣を空けてくれた。俺がそこに座れば、俺の足を踏んでその上で丸くなる。浮奇の膝の上で眠っていた猫たちは撫でる間もなく駆けていき、部屋の隅に設置してあるキャットタワーに登って俺たちを見下ろしていた。相変わらず俺にはあまり懐いてくれていない。
    「ふふ。ほら、俺がいるんだからそんな寂しそうな顔しないでよ」
    「……寂しそうな顔なんてしてない」
    「そうかな? 俺は今日は配信が休みだから、なんにもしないでのんびり過ごすつもりだよ。昨日結構長くやって疲れちゃったし家から出るかはまだ未定。ふーふーちゃんは、このあとは?」
    「散歩以外は特に予定はないな。何か食事を作ろうか」
    「んー、そうだね、……甘いもの食べたいなぁ」
    「残念、甘いものは専門外だ。アイスとかお菓子の気分ではない? ケーキでも買いに行ってこようか?」
    「……でも一緒にいたい」
    「疲れてるんだろ? 家でゆっくりしてたほうがいい」
    「んう……でもカフェラテも飲みたい……」
    「ああ、この前行ったカフェの、ラテアートがされてたようなやつ?」
    「そう。あれ、めちゃくちゃ可愛かったよね。しかもすっごく美味しかったんだ……また行きたいな……」
    「今日はやめた方がいいんじゃないか?」
    俺は手を伸ばして眼鏡の隙間から浮奇の目元を優しく撫でた。目を細めた浮奇は頬に触れる俺の手に手のひらを重ね、ほっと安心したように息を吐いた。
    「ふーふーちゃんの手、きもちいい……」
    「……長時間パソコンに向かっていたから疲れているんだろう。アイマスクは? 確かまだあったよな?」
    「そんなにじゃないよ、大丈夫。ふーふーちゃんが撫でてくれたら治るもん」
    「俺の手はそんな魔法道具じゃないよ。眼鏡、ぶつかって傷つけたら嫌だから外しても?」
    「ん……」
    まだ眠いのか、疲れているのか、ただ甘えているだけか。俺が眼鏡を外してやると、浮奇はゆったりと間隔の長いまばたきをしてみせた。誘われるままに顔を近づけ、その目が再び開く前にちゅっと唇を重ねる。ふっと溢れた笑い声を聞くにやはりこれは罠だったらしい。
    「ふーふーちゃんのえっち」
    「……わざとだろう」
    「なんのこと? 俺は眼鏡を外してもいいよって言っただけでしょう?」
    「……、……ほら、目をつむれ」
    「キスをするから?」
    「目元のマッサージをするから」
    「ふふふ、はぁい。キスもしていいよ?」
    「……」
    俺は返事をしないままメイクの施されていない素顔の浮奇の目元に触れて、ずいぶん前に自分のために学んだ眼精疲労を取るツボをいくつか押し、こめかみや耳へもマッサージをした。目を瞑って無防備に俺の手を受け入れる浮奇に嬉しさを感じていたのに、それがだんだんとイタズラ心に変わってくる。こういうところが俺の悪いところだ、と、自覚はしているがワクワクする心は誤魔化せない。それに浮奇の驚いた声や睨む目つき、怒った顔も、大好きなんだ。浮奇に愛想を尽かされない程度に俺は自分の欲望に素直になることにしている。
    マッサージをしながら顔を近づけると、目を瞑っていても気配で気がついたのか浮奇の口端がキュッと上がって、その唇がキスを待っていることは簡単に予想がついた。もちろんキスはしたいけれど、そんなイタズラじゃ物足りないだろう。
    俺は浮奇に顔をギリギリまで近づけて、唇が触れる直前でパッと手を離し、キスの代わりに耳にふうっと息を吹きかけた。ひゃっと叫び声を上げた浮奇はソファーの上で猫のように飛び跳ねて、素早く膝を抱え手のひらで自分の耳を覆った。信じられないって顔で俺を見つめ、実際「信じられないんだけど……!?」と鋭い声を向けてくる。思わずニヤけてしまった俺を見て余計に顔を顰め、ジロッと睨みを利かせてくるからたまらない。
    「さいあく……! 疲れてる恋人にそんな仕打ちする!?」
    「隙だらけだったからつい。ゴメンナサイ」
    「全然悪いと思ってないよね。ちょっと、喜ばないで。せめてニヤけるのを我慢する努力をして」
    「最高だよ、浮奇」
    「……アンタは最低だよ、ふーふーちゃん」
    チッと舌打ちまでくれるサービスっぷりだ。本当に拗ねられてしまう前に俺は笑い声を堪えてきちんと謝り、浮奇の気分が浮上するまで抱きしめてキスをした。
    実際多少はムカついていただろうが、もう浮奇も俺のイタズラには慣れっこだろう。早い段階で拗ねているのはポーズだけになり、ハグはキツくキスは深くなっていた。抱きしめていたはずがいつのまにか抱きしめられていて、ソファーの背もたれに沿ってずるずると体勢が崩れていく。
    「カフェラテ、今日は我慢する」
    「ん……あぁ、そうだな……?」
    「でも甘いものは欲しいから、ちょうだい?」
    「……何か、クッキーとか、残ってたかな」
    「クッキーはいいや。他のをもらうよ」
    まだもう少し言葉遊びをしようと思ったのに、それが長くなることを分かっている浮奇は早々に俺の唇を塞ぎ、後頭部で髪を結えていたゴムをするりと解いた。俺の髪は浮奇のように散らばって広がったところでそこまで唆るとは思えないけど、浮奇は満足げに笑みを浮かべる。
    「……浮奇、疲れてたんじゃ?」
    「マッサージのおかげでもう治った」
    「それはよかった。じゃあ散歩ついでにカフェにでも行くか」
    「うん、後で、ふーふーちゃんが元気だったら一緒に行こっか」
    「……夜の散歩を任せても?」
    答えはキスで返ってきたから、後はもう浮奇に全部任せよう。ゆるく結ばれている浮奇の髪も解いて俺の視界を浮奇だけにしてほしいと思いながら、俺は伸ばした手を浮奇の首の後ろに回して引き寄せた。いつもはメイクをしていてキラキラとまばゆい浮奇の瞼が今日はまっさらで、完璧にオフの浮奇が目の前にいることに嬉しくなる。
    着古したダボッとゆるい部屋着に、寝癖が残ったまま適当に結ばれた長い髪、メイクをしていなくても可愛い俺の恋人。着飾ることを楽しんでいることも知っているから何もしなくていいのになんて言わないけれど、どんな浮奇でも好きだということはいくら伝えても足りることはない。
    コンタクトにも眼鏡にも遮られることなく浮奇が俺のことをよく見える距離で、俺は心からの愛の言葉を囁いてキスをした。
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