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    実菜穂ワールド

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    実菜穂ワールド

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    「寂しくなったわけじゃないから!心配になっただけだから・・・。」

    🪼の過去編です〜
    そろそろ公開と執筆が追いつきそうでピンチ🪦

    ##過去編
    ##オリキャラ

    過去編③ るら 学校で繰り広げられる兄弟自慢。あたしには姉がいる。ただし、自慢できるような姉ではない。だから、頭のいい兄弟をもつ人も体の丈夫な兄弟をもつ人も、羨ましかった。
     今日はテストが近いので学校が早く終わった。帰り道、知らない人達が姉の話をしているのにすれ違った。どうやら姉のクラスメイトらしい。
    「海野はなぁ、馬鹿だしなぁ。論外だわ。」
    「よく休むし、たぶん何度かはズル休みなんじゃね?」
    よくよく聞いていたら、どうもクラスの女子達にランク付けをしているようだ。姉のことをよく知りもしないくせに、本人が目の前にいないのをいいことに言いたい放題。妹はすぐ目の前にいるというのに。あたしはポケットからスマホを取り出して、誰かに電話している風を装って大きめの声で言い返してやった。
    「憶測を事実だと決めつけて物事を語るのも、よく知らない他人を憶測で見下すのも、なんかダサいよねぇ。」
    姉のクラスメイト達は黙った。あたしは何食わぬ顔で帰った。
     あたしの姉は自慢できる姉じゃあないけど、同時にバカにできる姉でもない。姉は姉である。少し変わり者だけど、悪い姉では決してない、はずである。
     その時、家の電話が鳴った。母が受話器を取った。電話の相手は声が大きめなので、どんな話をしているのかはなんとなくわかる。姉の担任の先生だ。姉は呼び出しを喰らったらしい。母に二階へ行くよう指示されたので、もっと聞きたかったが仕方なく二階の自分の部屋へ行った。
     テスト勉強をしながら、ぼんやりと窓の外の夕陽を眺めていると、やかましい姉の声が聞こえてきた。
    「面倒くさ〜い!退屈だ〜っ!!」
    周りの家の壁で反響する姉の声。間違いなく近所迷惑だ。
    「姉ちゃん!家の前で大声出さないでよ!」
    「わっ!るーちゃん?!帰ってたの?!」
    「帰ってたも何も…。今テスト期間だから部活ないんだよ。言ったはずだけど?」
    姉は人の話を半分くらい聞いていない。そして、大事なことは忘れるくせに、どうでもいいことばかり覚えている。幼い頃のあたしの一人称とか。
    「あとさ、るーちゃんって呼ぶのやめてよ。」
    「えー、かわいいのにー。」
    「だいぶ前にもやめろって言った。なんで余計なことばっか覚えてるのさ…。姉ちゃんもちょっとは勉強したら?また先生から呼び出しの電話があったんだよ?」
    「ええ〜っ、また〜?!」
     姉はさっきのクラスメイト達が言うように、実際バカなのかもしれない。けれど、姉は他のところに才能があるから、あんな風にバカにされるとさすがのあたしもキレる。あたしにはない「何か」を持つ姉のことが、実際少し羨ましいのだ。
     姉が家に入ってからしばらく勉強していたら三時間ほど経っていた。母に呼ばれて晩ご飯の準備を手伝う。姉の姿はない。おそらく自分の部屋で寝ているのだろう。
    「るらちゃん、さっちゃん起こしてきてよ。」
    「もー、お母さんまでそんな呼び方しないでよー!」
    「ごめんごめん!じゃ、よろしくね、くらげ。」
    こういう時、姉を起こしに行くのはいつもあたしだ。姉は起きるまでにかなり時間がかかる。
    「あ、そうだ。話があるって伝えといてくれ。」
    「お父さんまであたしを伝言板にして!もう…。」
    渋々受け入れた。末っ子に拒否権はない…ことはないが、断る理由もない。
     姉の部屋のドアを大きくノックする。返事はない。思い切って部屋に入ると、案の定机に突っ伏して眠っていた。
    「姉ちゃん、姉ちゃん!晩ご飯!!」
    「わあっ…?!」
    姉は情けない声で目を覚ました。母の用事はクリアだ。次は父の用事だ。
    「それから、父さんが話あるって。」
    「えー…。絶対お説教じゃん…。」
    寝ぼけた顔が一瞬にして不満そうな顔に変わった。姉は表情の変化が非常にわかりやすい。父が姉を叱るところは見たことがなかったので、少しワクワクしている。
     しかし、実際にはお説教ではなかった。
    「お前、自然が好きだろう?そんなお前に丁度良さそうなプログラムを見つけたんだが。」
    「えっと、なになに…?無人島移住パッケージ?無人島に住むの?流刑?」
    「いや、そうじゃなくて…。自然の中でなら机に向かうよりも勉強…ううん、学習ができるんじゃないかと思って……。」
    勉強嫌いな姉が楽しく学べるように、父はずっとその方法を考えていた。そんな時、ちょうどこのようなプログラムのチラシを見つけ、思わず申し込んだそうだ。
    「へえ…、姉ちゃん出てっちゃうんだ。」
    「寂しいなら一緒に来る?」
    「別に寂しくなんかないし。」
    姉はすぐに調子に乗る。なんだか煙たい。だけど、今まで当たり前のようにそばにいた存在がいなくなってしまうのは、寂しい気もする。

     姉の出発当日、彼女は寝坊した。慌てて朝ごはんを食べて、荷物を持って、家を飛び出していった。家から騒がしさが消え、静かになった。
    「物足りない?あなたも参加する?」
    「えっ…、いや、あたしは…。」
    参加したい、と言うのはなんだか恥ずかしくて、まともに返事ができない。
    「いつもはっきり言うあなたが言葉に詰まる時、大抵答えはイエス、じゃない?」
    母はあたしのことをよく分かっている。姉がいないと寂しい、姉のことが心配、そんなあたしの気持ちを、誰よりも理解している。
    「あたしも、参加…する。」
    「今申し込めば、一番早くて明日には参加できるみたいだね。」
    「明日…?!早っ!」
    こうなれば即決だ。あたしは荷物を詰め始めた。
     翌朝、あたしは早起きしすぎた。眠い目を擦りながら朝ごはんを食べて、歯を磨いて、髪を整えた。
    「さっちゃんのこと、よろしくね。」
    「あたしが行くのは、別に姉ちゃんのためじゃないんだからね!」
    荷物を全部持って、飛行場へ向かう。昨日ここを姉が焦った顔で走り抜けていったんだと思うと、なんだか面白い。
     飛行場に着くと、パイロットのロドリーさんがあたしを出迎えてくれた。
    「少し時間を過ぎてからいらっしゃったお姉さんとは逆に、妹さんの方は少し早くいらっしゃいましたね。」
    「あたし、寝坊しないので。」
    「今日参加する人は貴方だけですし、もう行きましょうか。」
    「よろしくお願いします。」
     飛行機が飛び立つ。街も人もどんどん小さくなっていく。姉も見た景色。これから始まる新しい生活にドキドキしてきた。
     やがて飛行機が島に着くと、飛行場でたぬきちさん達が出迎えてくれた。そこには、姉の姿もあった。
    「るーちゃん?!」
    姉は嬉しさと驚きが混ざったような声と顔をした。
    「やっぱり姉ちゃん一人じゃ心配だから。」
    別に寂しくて会いたくなったからきたわけじゃないということ、あくまで心配だからついてきたんだということ、寝坊はしなかったことなど、色々話した。おそらく半分も聞いてない。
    「これからまた一緒に暮らす感じ?」
    「まさか!あたしにも自分のテントがある!」
    「なぁんだ。」
    同じ島であればそれでよかった。一緒に暮らすと間違いなく疲れるので、それだけは避けたい。
    「この島…、整備するの手伝うけど?」
    「本当?!」
    島の一員として、あたしも何か貢献したい。掃除は苦手だけど、苦手を克服するいい機会だと思って頑張ろう。
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