聖者の行進「ごめんねぇ圭介くん、こんなこと頼んじゃって…ハウスの上から落ちるとか、お父さん馬鹿やけん…自分の歳ば考えんとハウスの修理なんてして、ほんともう」
「いーよ、俺らの畑の面倒いつも見てもらってっから、たまにはなんかさせて」
「そっすよ!水やりくらいなんてことないっす」
「ありがとうねぇ…あれま、千冬くん首のとこ怪我して…あっ、」
「あっ、」
咄嗟に首の右側を手で押さえる。
おばちゃんは、あらあらまぁまぁとニコニコ…いや、ニヤニヤして、俺の顔面が熱くなる。
だから見えるとこには噛みついちゃ駄目って言ったのに…!
圭介さんはとぼけた顔をしてあらぬ方に目線を向けていて、玄関の板張りに腰かけていたおっちゃんも顔を赤くして視線をそらしてくるから、俺はもう居たたまれなくなって足を後ろにジリジリと下げる。
1532