強みが弱点 夕方の渋谷の交差点。学校や仕事を終えて家に帰る人、これから街に繰り出す人、なんとなく街に入り浸っている人。いろんな人でごった返す交差点を、俺は人に揉まれながら当てもなく歩いている。
たまに人にぶつかられて舌打ちされることあるけれど、八つ当たりされたって文句を言われたってどうだってよかった。
不意に彷徨っていた足が止めてみる。そういえば今どこにいるんだっけ? 我にかえって足元を確認すれば俺は歩道橋の上に立っていた。見上げれば見慣れた窓ガラスが瞳に映る。
また、こんなところにきてしまった。
颯真の病院はこの歩道橋を降りた少し先にある。今更行っても、とうに面会時間は過ぎている。
ずるいな、面会時間を言い訳に使うなんて。
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