甘露つぐみが前から行きたかったという甘味処に来た。 平日なのもあって、間食の時間帯ではあるがすぐ席に案内される。
「お待たせいたしました。 クリームぜんざいでございます」
「ありがとうございます、おいしそう」
つぐみの目当てはこのクリームぜんざいだったようだ、顔が幸せに輝く。
「おいしい~」
やはり女子はこういった甘いものを好む傾向にあるのだろう。 餡とクリームを少し混ぜ、白玉と一緒に口に運んでいる。 無邪気で愛らしいと思った。
「弦一郎さん、あーん」
それを眺めていると物欲しげにしていると思われたのか。急に一口差し出された。 周囲の目を気にして一瞬固まる。 交際しているとはいえ、こんな公共の場でそのような。
「……!!」
しかしブレーキが利いたのは一瞬だった。 どれだけテニスで剣の道で己を磨こうと、この人にだけは永遠に勝てない。 観念して受け取った。
「おいしいですか?」
クリームの冷たい感触はするが、甘いはずの味が正直よくわからない。 目を白黒させていると、クリームか餡が少しついていたのかつぐみがこちらに手を伸ばして口元に触れた。 口を拭ったその指を、ひと舐めされる。
「甘いですね」
それから数分の記憶がない。