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    金白/白金

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    金白/白金

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    寡黙な親友の話

    久しい親友太陽の光がキラキラと眩しい、ある晴れた日
    いつも通りに美しく身仕度を整えて
    毎日変わらない顔ぶれと挨拶を交わす



    「アルジャナ様、おはようございます」
    「やぁ、おはよう」

    「アルジャナ様、今日も大変お美しい」
    「ありがとう」

    「アルジャナ様、今日はどちらへ」
    「個人的な用事だ」
    「かしこまりました」




    アルジャナ様、アルジャナ様、アルジャナ様




    いつもと同じ、皆が僕の名前を呼ぶ
    美しいのだから当然だし、これが日常



    けれど、少し退屈でもある

    そうして、どれくらいかも分からない期間を
    過ごしていた

    そしたら突然、変わらない退屈な日々に
    久しく聞いていなかった音が帰ってきた





    「……また来たのか、アルジェナ」

    「リベルタス!今日も美しい天気だぞ!」




    自分の神殿を出て、街を通り彼のところへ行く
    彼がいる場所は、昔住んでいた森ではなく
    ゼウスの住む神殿で、今はそこに身を寄せている



    「今日は何もない日だろう?共に出掛けよう!」
    「……誰に聞いた」

    「ん?ゼウスが教えてくれたよ」
    「チッ……あのクソ上司」



    彼は僕の来訪に嫌な顔をし、
    上司であるゼウスへ舌打ちをする



    彼はリベルタス
    僕の大好きな、大切な親友



    はるか昔に森で共に生まれ、共に育った
    幼い頃は、仲良く野山を駆け回っていたものだ

    ところがある日、何処からともなく醜い男が現れ
    僕の親友を、僕から取り上げた

    リベルタスはその男を”師匠”と慕っており
    彼はその男が旅立つ際に、僕を置いて男を追った



    「早く支度をしたまえ、リベルタス」


    そして、つい最近になって彼だけ帰ってきた
    美しかった顔や体に、たくさんの傷を抱えて



    熟したラズベリーのように美しかった彼の瞳は
    右目が潰され、もう二度と見ることはできない

    整った彫刻のように美しい顔は
    痛々しい程に、大きな十字の傷が刻まれている

    2mあるバランスのとれた美しい体躯は
    痣や傷、それに火傷の痕も無数にあった




    「…押し掛けておいて催促するな」




    リベルタスはそう言いながらも、支度を終えた



    「…で?どこに連れて行く気だ」
    「それはまだ内緒だ!」

    「…あ?」
    「さぁ、早く行こう!」



    彼を引き連れて、とある場所へ向かう
    文句を言いつつも、彼は来てくれた


    昔と違い、彼は僕の数歩後ろを歩く

    歩きながらチラリと後ろを見ると、
    彼は眩しそうに目を細めていた
    赤茶けた短い髪が、日に照らされて光っている




    「…どこまで行く気だ、アルジェナ」



    彼は昔から、僕のことをアルジャナではなく
    唯一、アルジェナと呼ぶ

    訛りのせいだと彼は言うけれど、
    彼だけに呼ばれるその名が、僕は凄く嬉しい


    彼は寡黙だが、その分その他は雄弁だ

    僕を嫌がるときは眉間にシワが寄るし
    何かに怒っているときは足に力が入っている
    美味しいお酒を飲んだときは、口許が少し緩む




    そんな表情豊かな彼は、とても美しい




    「…おい、アルジェナ」



    とても大切で、大好きな僕の親友
    醜い男によって、悲しみを背負わされた彼



    醜いものは周りを不幸にする
    だから僕は、美しいものをかき集めた

    美しければ誰も傷つかない
    だから僕は、醜いものが嫌い



    「もうすぐだ!」



    僕は、美しい彼が大好きだ
    僕の好きなものを、彼にも共有したい


    大好きな僕の美しい親友を
    もう一人の親友はどう思うだろうか?

    きっと、彼の良いところを見つけて好きになってくれるに違いない




    彼らは、仲良くなれるだろうか
    まぁ僕の親友なら、心配はいらないだろうけど





    「紹介するぞ、僕の親友だ!」
    「コレ!?」
    「………」

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