(だって夢だからね!)妖精國マンチェスター領。その土地を治める逞しくも麗しき領主は、うつくしく整えられた屋敷の奥の奥。殊更に丁寧に設られた一室のドアを開く。
ランプがひとつ灯ったきりの薄暗い、けれど橙色の温かな光に満ちた部屋だった。
入り口のドアの正面には庭に面した窓があり、夜半の今は温かな色のカーテンがひかれている。そこから少し視線をずらせば、豪奢では無いがそのぶん上品な天蓋付きのベッドがある。
そこに半身を起こしたまま横たわる相手を見て、妖精騎士ガウェインは、ようやく騎士としての表情をすこし弛めた。
「ただいま、アドニス」
常から騎士として厳しく自分を律している彼女がこれほどまでに柔らかな声を出すのは珍しい。きっと彼女の部下ですら、こんな声は聞いたことがないだろう。
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