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    つーさん

    @minatose_t

    辺境で自分の好きな推しカプをマイペースに自給自足している民。
    カプは固定派だが、ジャンルは雑食。常に色んなジャンルが弱火で煮込まれてるタイプ。
    SS名刺のまとめとか、小咄とか、思いついたものをぽいぽいします。
    エアスケブもやってます。お気軽にどうぞ。

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    つーさん

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    卒業前に盛大に拗れるガプアガ、その2。年齢操作です。
    無駄に文字数増えそうで完成できるか怪しいので、書けた分だけ供養に投げます。タグでシリーズ管理してます。
    無自覚ガープと自覚ありなので距離を取ろうとするアガレスという話です。

    #ガプアガ
    gapuaGa.
    ##菫青石は砕けない

    菫青石は砕けない2 翌日から、アガレスは少しずつ自分達の距離を調整することを心がけた。気付かれないように少しずつ、お仲間としての距離を調整するのだ。
     ただ、突然大幅に距離を取るとガープに気付かれる可能性があったので、行動は本当に些細なところからだった。だから、朝迎えに来るガープにはいつも通りに挨拶するし、いつも通りに彼が作ったおむすびを食べるし、いつも通りにガープに運ばれる。
     パジャマから制服に着替えさせるのも手慣れたガープが、聞いてもいないのに昨日は何があったのかを話しているのを耳にしながら、アガレスは寝る。学校に着くまでの間、着いてからも寝る。それはいつものことだったから、誰も何も言わなかった。
     けれどそれは、距離を取るための一つの手段だった。
     ガープはアガレスが眠っていても勝手に話しかけてくるし、勝手に世話をする。それでも、本当に熟睡しているときは構わないようになっていた。アガレスにとって睡眠が大切だということを理解しているからだ。
     そして、アガレスが熟睡していれば、快適な睡眠が確保出来るように周囲を整えてから、他の誰かのところへ行く。それは収穫祭の時に共闘した同級生達であったり、問題児クラスの仲間達であったり、在籍中に関わるようになった後輩達であったりする。
     とにかく、アガレスが眠っていればガープは別の誰かのところへ行ってしまう。それをアガレスは利用した。

    「それではアガレス殿、拙者は見回りに行ってくるでござる。良い夢を、でござるよ」

     楽しそうな口調で告げて、ガープは去って行く。当たり前みたいにアガレスの頭を優しく撫でて、寒くないようにブランケットを被せて、ししょーにアガレスのことを頼んでから、だ。律儀にもほどがある。
     軽やかに去って行く足音が遠ざかるのを聞きながら、アガレスはアイマスクの下で伏せていた瞼を持ち上げた。アイマスクをしてしまえば、彼が寝ているか起きているかを見分けるのは難しい。

    (俺のタヌキ寝入りに気付かない程度には、お前はポンコツだよな……)
     
     敵意や害意には聡い癖に、こういうところはいつまでたっても鈍いガープに思わず溜息が零れる。ポンコツで、鈍感で、間合いが分かってなくて、一生懸命に常に空回りして走っているような男だ。
     ガープの良いところをアガレスは沢山上げることが出来るけれど、同時に彼のダメなところも沢山知っている。知った上で彼が好きだった。その欠点すらも愛しく思えるほどに、大切だった。
     だが、それではダメだ。この気持ちを捨てることが出来ないのはもう、自覚している。それならばせめて、自分がただの仲間として、相棒として振る舞える距離を維持するのが必要だった。
     アガレスの世話をせっせと焼いて、この6年でガープはアガレスのことに随分と詳しくなっただろう。アガレスの好き嫌いも、快不快も正しく理解して、実に心地好いお世話を焼いてくれる。
     例えば、こうやって眠っているときにブランケットやクッションを用意してくれる。基本的にはししょーにうつ伏せに寝ているので何もいらないのだが、時々体勢を変えたときにクッションがあると身体が楽だったりする。ブランケットは暖かくて心地好い。
     毎朝毎朝用意されるおむすびにしても、アガレス好みの味付けになっている。抱え方も、運び方も、制服へ着替えさせる手付きも、何もかもが快適で、心地好くて、その優しい泥濘に浸っていたいとすら思えるほどだ。
     だがそれは、アガレスが抜け出さねばと決意するほどに残酷な優しさだ。
     極論を言えば、ガープ・ゴエモンという少年は、誰にでも優しい。困っている人がいたら見過ごせない。はぐれている者達を見つけたら世話を焼いてしまう。究極のお節介で、お人好しで、他人との間合いが分かっていない大バカだ。
     そう、今はたまたまアガレスに与えられているが、これは別に、アガレスだけに与えられるものではないのだ。この場所が、他の誰かに変わる可能性だってある。それが分からないほどアガレスはバカではなかった。

    (こんなにしんどいのに、俺は意地を張って隠し続けて、お前は何一つ気付いてくれないんだもんな)

     プライドが邪魔をして、素直に恋心を伝えることがなかったアガレスが悪いのだ。ガープは間合いの取り方が分かっていないし、情緒はポンコツだし、色々と距離感バグみたいなのを抱えた困った男だ。それでも、誠実に相手と向き合うことを知っている。
     今までガープに告白してきた少女達だってそうだ。ガープはいつだって丁寧に、彼女達の気持ちと向き合った。好かれて嬉しいと告げ、それでも付き合うまで至らなかったことがアガレスには不思議でならない。
     だってガープは、サバトに反応するし、告白されて大喜びするし、モテたいと叫ぶし、彼女が欲しいと叫いているのだ。
     けれど、誰が相手でも良いというわけではないらしい。話してみて、自分と合わないと思ったら、相手を傷つけないように丁寧に断っている。そういう優しい男だった。優しすぎて残酷だと気づけない程度には。
     振るならば、いっそ冷淡にズバッと断ってやった方が相手のためだ。アガレスがやっているように。お前に興味はない、お前とは付き合えないときっぱりはっきり言ってやれば、彼女達も失恋を早く忘れることが出来るだろう。下手に優しくすると未練が残る。
     現にアガレスは、ガープから与えられる優しさに未練を感じて、引きずられて、自分で引導を渡すことも、ガープに引導を渡してもらうことも出来ないままに今に至る。もっと早い段階でこの気持ちを伝えてきっぱり振られていれば、今頃は仲間として側で笑っていられたかもしれないのに。
     けれど、アガレスはそれが出来なかった。ガープには知られたくなかった。自分がこんな感情を抱えているなんて、一番近いところにいる相棒だからこそ、知られたくなかったのだ。
     ガープがアガレスに向ける感情はどこまでも真っ直ぐで、一途で、直向きだ。重苦しいほどの信頼を、それでもどこまでも純粋にぶつけてくる。……そんな相手に、自分は欲を孕んだ恋愛感情を抱いているのだと伝えるのは、どうしても出来なかった。
     この気持ちを知っても、ガープは別にアガレスを拒絶したりはしないだろう。照れたように笑って、好かれて嬉しいと言うかも知れない。最初こそ困惑しても、今までと同じようにアガレスの世話を焼くだろう。
     ……そんなことが想像できて、アガレスは絶対に、ガープにはこの気持ちを伝えないと決意してしまった。
     想いを伝えて、それを当たり前みたいな顔で受け止められて、何もなかったように当たり前の日常が巡ることが耐えられなかった。自分の気持ちはそんな風に軽いものじゃないと言いたくなる。想像の中のガープに怒りを抱いて、隠すと決めたのはアガレス自身だ。
     けれど、その可能性を否定できないのだ。盛大に拒絶された翌日に、当たり前の顔で迎えに来たガープの姿が印象に残り過ぎている。いつだってあの男は自分のやりたいようにしかやらないし、こっちの感情の機微なんてお構いなしに間合いを間違えたまま生きている。
     この想いを、そんな風に扱われたら耐えられなかった。決して結ばれることがなく、報われることがない感情だったとしても、あってもなくても同じように扱われるのだけは耐えられない。そんなことになったら、アガレスの心が砕け散る。
     だから、距離を取る。少しずつ、気付かれないように、慎重に。卒業までまだ時間はあるのだ。上手に調整すれば大丈夫だと、アガレスは思う。
     ……その目論見が、思いも寄らないほどに早く破綻するなんて、彼はこのとき考えてもいなかったのだ。
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