雌獅子は愛を抱く④「いや~……あれは厄介だわ」
真経津宅のソファーに乱暴に腰を下ろした叶は、背もたれでぐいっと背筋を伸ばしつつ天井を見上げた。
此処に来る前、これから仕事だと言うから勤務先に置いてきた村雨は果たして使い物になるのだろうか、と普段の当人に訊ねたら指一本切り落とされても不思議では無い事をちらりと考える。
「……愛の反対は何だと思う」
「有名な奴だろ? 無関心」
「その通り」
向かい側に座った天堂は膝の上で手を組み、物憂げに溜息を吐いた。今日の感想はまさしくそれに尽きる。
掛かり切りになっていたカラス銀行の件に片が付き、打ち上げ気分で久しく会っていない獅子神の元を訪ねた。
それは懐かしい友人に会いたいからというだけではなく、銀行の策略の中で恋人の手を離さざるを得なかった村雨と獅子神とが再び共に歩けるようになれば、というお節介な下心もあったのだ。共通認識であったそれらは見事撃沈した。最早ヨリを戻すどころの話ではない、凄まじい勢いで事故っている。
7202