服の裾をクイと軽く引かれる感覚につられるように振り返る。
目が合ったのは少し焦っているような表情で、目的地へは遠回りとなる道を指差して今度は腕ごとそちらへ誘導するように引っ張られた。
「こっちの道通ろう」
言葉少なにそれだけ言って、神在月はナギリをグイグイと指差した道へ押し込むようにして連れて行く。
「…?どうした?」
疑問を口にしつつも、急いでいるわけでも無い散歩代わりの買い物のつもりで出て来ているので、そのまま流されるように足は何時もと違う道へ逸れる。
「ちょっと知ってる吸血鬼の人があの道の先に居る気がして。一応避けとこうかなって…」
「…知っている吸血鬼?」
ナギリが眉間に皺を寄せ、あからさまに嫌そうな顔をして口を開いたと同時に、背後から身に覚えのある喧噪が聞こえてくる。
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