雨の日の話 昼間から降り出した雨は勢いを増し、ざあざあと地面を叩きつけている。雨脚が弱まる気配はまだない。そのため、粟田口部屋では、トランプ大会が開催されていた。
「雨、止みませんねぇ。せっかくみんなが揃っているのに……」
「まぁ、たまにはこんな日があってもいいんじゃねぇか」
「雨の音は、落ち着くので好きです」
「ボクも雨の音は好きだけど、湿気で髪がうねるのが嫌になっちゃう。鯰尾兄さんは?」
「俺は湿気とかあんまり気にならないからなぁ。いち兄は?」
「私?私は……雨の日は洗濯物がよく乾かないからね、それだけは困るかな」
雨の日自体は嫌いではないよ、と付け加える。嘘ではない。一期一振は雨の日が苦手だった。
「失礼します。一期一振殿、少しお時間よろしいですか」
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