灼熱のシンポシア「―ねぇ、ザグレウス。今度アスポデロスを《通過》するとき、エウリュディケのところに顔を出してお行きなさい」
「え……、彼女が何か言っていましたか?オルフェウスからは特に聞いていませんが」
冥王譲りの闇色の結膜に浮かぶ紅い瞳がきょとんと見返してくる様が何だか微笑ましくてペルセポネはふふっと笑う。
「行ってみればわかるわ!」
「はい、母上がそうおっしゃるのなら、忘れずに立ち寄ってみます!」
一片の疑いもなく素直に頷いた王子の姿に、我が息子ながら純粋に育ち過ぎやしないかと一抹の不安が頭をもたげた冥界王妃だったが、あの気難しやのハデスの元ですくすく育った彼自身の強かさを信じることにした。
◇
「―ふぅ、こう暑いと早く歌乙女の所に寄って美味しいフレッシュネクタルでも飲みたくなるな……」
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