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    さめはだ

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    さめはだ

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    拓2♀、致す前
    キスの日だから書いた

     ちゅっ、ちゅう…ちゅ…。自分に降り注ぐキスの雨の音。文字列だけを見たらなんて素敵なフレーズなんだろうと思うが、場所が場所なもので虚無になりながらベッドヘッドへと目線を向けた。

     このキス攻撃は、いつになったら満足するのだろうか。

     なおも雨音を鳴らし続ける尻には至る所にキスマークが付いていることだろう。



     拓也から向けられる特大の愛はいや等ほど感じている。初恋は叶わない、というのを信じて項垂れていたこともあったが、それが迷信だと言う事は進展した関係が証明してくれた。告白と言ってもそんな甘いものではなく言葉の殴り合い。「私ばかりにかまけていたら彼女なんてできないぞ!」「かっちーん。今に見てろよ?超絶可愛い彼女出来っからな」「へぇーへぇー、そんな物珍しい女がいたらお目にかかりたいものだ」「鏡みたら会えるぜ?俺が好きなのはお前だから!」「奇遇だな、私もお前が好きなんだ」「じゃあ付き合う?」「……うん」…ってな。いや、私はバカか。そして拓也もバカだ。最近流行りの恋愛ドラマのような告白を夢見ていたはずなのに、がんを飛ばす勢いで続いたキャッチボールの末の成就だなんて誰が思うだろうか。

     気がつけば、幼なじみ、親友、悪友に「恋人」が追加された私たちの関係は、自分が思ってた倍の速度で深いものへと変わっていった。そのまま口づけを交わし、へらりと笑った顔を忘れることはないだろう…と、考えてた3日後には身体を許し、5日後には共に入浴もして…。トントン拍子すぎて不安にもなった。ああコイツは、手っ取り早い相手が欲しかったのかな…。だが、その不安の芽は数年たった今はすっかり枯れている。眼差しから「好きだ」と訴えかけられ、指先からは「愛おしい」と伝わってくる。本来は不器用な筈なのに、こうも巧みに表現されたらこちらのキャパシティがパンクしてしまう。心の容量を徐々に広げていき決壊は免れた。慣れるしかないだろ、こんなの。

     そんな拓也の口から贈られるのは何も言葉だけではない。そう、私の至る所へと口づけが添えられる。正直…とても、嬉しい。だが手放しで喜べないのは、唇の次に多い贈り先にある。

     コイツは、とにかく尻にキスをしたがった。

     ゴツゴツと骨が浮いた自分の尻と比べたら柔らかいのが良いのか、それとも膨らみが少々足りない胸への当てつけか。とにかく丸い双曲へ2枚の壁が押し当てられる。キスマークだって相当の数だ。普通に生活を送っていたら他人に見られることはないからかまわない。最初の頃は恥ずかしさと擽ったさで顔面から火を拭きそうになったが、慣れてしまった私は最早諦めの境地。今日も今日とて枕を抱え込みながら、コイツが満足するまでベッドヘッドを眺めているのだ。


    「んちゅ……ん〜…きもちー…」
    「はいはい、それはよかったなぁー」
    「ふはっ…なぁに、拗ねてんの?」
    「そんなわけないだろ。無心さ」
    「……」

     身体を反転させられ、優しく微笑んでいる拓也と向き合った。キレイな指が髪を一束掬い上げ、私と比べて厚みを感じる唇へと持っていく。尻もだが、拓也はとにかくキスが好きなのだ。

    「くくっ…無心、ねぇ…」
    「なんだよ…」
    「俺がさ、なんでケツにばっかちゅーしてるのか知らないだろ?」
    「…単にお前が、お尻好きだからじゃないのか?」

     微笑みから意地の悪い笑みへころりと変え、くつくつと笑い出した。そんな姿に疑問を抱きながら「なんだよ」と投げかける。シーツに押し付け潰れた双曲の脇をなぞり上げた拓也が、笑みを乗せた唇を開けた。

    「こーじってさ、結構乙女思考じゃん」
    「…そんなことない」
    「あるって!…で、な?まあ調べた訳ですよ拓也くんは」
    「…なにを」

     妙に勿体振る口振りに苛立ちを感じながら、何を言われるんだろうかと身構えた。

    「キスする場所に意味があるのって知ってる?」
    「聞いたことはあるな…唇が愛情、とかそういうやつだろ」
    「そーそー、唇は深い愛情…喉は強い欲求、髪とか頭は愛おしいって意味」

     ちゅ、ちゅ、と順々に唇が寄せられる。

    「ふっ、んぅ……な、なんだよ…」
    「まぁだ…聞いて?」
    「た、くやぁ…!」
    「へへっ……鼻はなぁ、大切にしたいで…鎖骨は性的欲求…」
    「ぅ、あッ!」

     付いて出た声が艶めかしいもので、顔面の火照りに拍車がかかる。聞いてられない説明に「愛情」を受けた唇がわなわなと震えだした。

    「んで、尻は……お前に、性的欲求と愛おしさを感じてるぞって、意味があんの」
    「ひゃ…んああっ!」

     楽しそうに嬉しそうに知識を披露する姿に一層大きな声が上がった。そんな私に満足そうな笑みを浮かべ、舌舐めずりをした後たっぷりの愛を贈ってくるそこが開かれた。


    「輝ニのことが、大好きでだーいすきで、たまんねぇ…ってこと!…わかった?」



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    Replies from the creator

    さめはだ

    DONE成長拓2♀
     これが何度目のデートなんてもうわからない。ガキの頃からの付き合いだし、それこそ二人で出かけた回数なんて数えきれないぐらいだ。良く言えば居心地の良さ、悪く言えば慣れ。それだけの時間を、俺は輝二と過ごしてるんだしな。やれ記念日だやれイベントだとはしゃぎたてる性格はしていない。俺の方がテンション上がっちまって「落ち着け」と宥められる始末で、だからこそ何もないただのおデートってなりゃお互いに平坦な心持になる。

     でもさ……。

    『明日、お前が好きそうなことしようと思う。まあ、あまり期待はしないでくれ』

     ってきたら、ただの休日もハッピーでスペシャルな休日に早変わりってもんよッ!!



     待ち合わせは12時。普段の俺たちは合流してから飯食って、買い物したけりゃ付き合うし逆に付き合ってももらう流れが主流だ。映画だったり水族館だったり、行こうぜの言葉にいいなって返事が俺たちには性が合ってる。前回は輝二が気になっていたパンケーキだったから、今日は俺が行きたかったハンバーグを食べに行った。お目当てのマウンテンハンバーグを前に「ちゃんと食い切れんのか」と若干引き気味な輝二の手元にはいろんな一口ハンバーグがのった定食が。おろしポン酢がのった数個が美味そうでハンバーグ山一切れと交換し合い舌鼓を打つ。小さい口がせっせか動くさまは小動物のようで笑いが漏れ出てしまった。俺を見て、不思議そうに小首を傾げる仕草が小動物感に拍車をかけている。あーかわい。
    1780

    さめはだ

    DONEモブ目線、成長一二。
     鍵を差し込んで解錠し、ドアノブを回す音が聞こえてきた。壁を隔てた向こう側の会話の内容までは聞こえないが、笑い声混じりの話し声はこのボロアパートじゃ振動となって伝わってくる。思わずついて出た特大のため息の後、「くそがァ…」と殺気混じりの呟きがこぼれ落ちた。

     俺の入居と入れ違いで退去していった角部屋にここ最近新しい入居者が入ってきた。このご時世にわざわざ挨拶に来てくれた時、俺が無愛想だったのにも関わらずにこやかに菓子折りを渡してくれた青年に好感を持ったのが記憶に新しい。

     だが、それは幻想だったんじゃないかと思い始めるまでそんなに時間はかからなかった。


    『あッ、ああっ…んぅ…ぁっ…!』

     
    「……」

     ほーら始まった。帰宅して早々、ぱこぱこぱんぱん。今日も今日とていい加減にしてほしい。残業もなく、定時に帰れたことを祝して買った発泡酒が途端に不味くなる。…いや、嘘です。正直、めちゃくちゃ興奮してる。出会いもなく、花のない生活を送っている俺にとってこんな刺激的な出来事は他にない。漏れないように抑えた声もたまらないけど耐えきれず出た裏返った掠れた声も唆られる。あの好青年がどんな美人を連れ込んでるのかと、何度想像したことか…。
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