みじかい話嘘つく彼の独白
レンはすぐに「好き」と言う。友だちであれば「××のこと?もちろん好きだよ!」と言うし、犬を見かければ「好き!」、近所のおしゃべりなおばさんのことは「大好き」だし、俺の母親のことも「面白くて優しくて好き」なんだ。あいつには好きなものがたくさんあって、だから彼が俺に向ける「好き」も、その他大勢の「好き」の中のひとつに過ぎない。つまり今、俺の背中に腕を回して肩に頬を押し付けながら「好き」と切ない声で彼が言っていたとしても、アップテンポに合わせたメトロノームのように俺の鼓動が高鳴っているとしても、その「好き」は道端の犬や俺の母親、近所のおばさんに向けるのときっと同等で、だから「俺も好き」だなんて言うべきではないのだ。
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