夏五版ワンドロワンライ第68回お題「奇特」 つい最近、他人に指摘されて初めて知ったのだが、何気なく使っていた「奇特」とは、非常に珍しい、という意味の他に、特別に優れていること、というものがあるらしい。
こんな私をあれこれ気にかけてくれて、積極的に話しかけてきて、どんなに邪険にしても挫けない。まったく彼は奇特な男だ――話の流れでそんなことを口にしたときだったと思う。
ま、あいつならそっちの意味でもなんら違和感はないけどね、とその知人は付け加えた。
出会ったときからの大きな謎だ。なぜ彼はこんなにも、私に心を砕いてくれるのだろうかと。
物心ついたときから、ヒトというものが苦手だった。話すことはもちろん、大勢の中に佇むだけでも苦痛に感じた。
これといって明言できる理由はない。
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