雨が好きな理由 ポツポツ、コンコン、パタパタ。
雨が街を打つ音は、よく聞くとバラエティに富んでいて飽きが来ない。傘を叩く音、金属を叩く音、瓦を叩く音、コンクリートを叩く音――どれも僕は好きで、雨の日は窓の外を見ながら耳を澄ますのが日課になっている。実際こうしてると雨に混じって強い呪力の音が“聞こえる”こともあって、仕事面についても結構効率がいいのだ。
今日は朝から雨だった。いつものように外を眺めて、周りの音を拾う。
窓の外に張られた電線からポタリポタリと垂れる雫を視線で追っていると、ふと視界に黒い傘が映った。遠目からでは真新しく見えるその傘だが、実のところそんなでもないことを僕は知っている。上質な素材で出来た物は、たとえ使い古していたとしても、大切にしていれば綺麗に保たれるのだ。
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