敵が懐から何かを取り出すのが見えた。
「すまない、マスター!」
シャルルマーニュは言うが早いか立香を抱き上げるとすぐさまその場を蹴って離れる。
途端、さっきまで居た場所で大きな爆発が起こった。
爆風を背に少しでも立香を隠すように庇いながらも、次の攻撃に備えて警戒は怠らない。立香もシャルルマーニュの邪魔にならないようにと肩に手をかけ身を寄せる。
けれど、舞い上がる土煙がはれた先にはだれも残っていなかった。
「逃がしたか……」
シャルルマーニュは立香を地面へ降ろす。足が地面につくと背中を支えながら立ち上がり、立香の手が肩から離れてから支えを外した。
「怪我はなかったか?」
そう訊ねながら周囲を見回してみるが気配はどこにもない。聞こえるのも木の葉の擦れる音程度だ。
これ以上ここにいても見つかることはないだろう。無意識に舌打ちが出そうになったが、事を起こす前に自覚して止める。
「大丈夫。行こう、シャルルマーニュ」
「ああ」
立香はその場にはもうようはないとばかりにくるりと踵を返して歩き出す。
敵も向かう先は変わらない。進んでいれば必ずやまた相まみえるだろう。
爆破跡をきつく睨みつけて目をそらすと、シャルルマーニュは先を進む立香の背を追った。