「シャルルの髪、綺麗だよね」
立香がシャルルマーニュの再臨を経て伸びた髪を掬い上げた。
「そうか?」
するすると指先からこぼれていく感触を楽しむように掬っては零しを繰り返す立香を、シャルルマーニュは微笑ましく見守っている。
「うん、すごくサラサラで触っていて気持ちいい」
「そうか。君にそう言ってもらえるのなら、この髪でよかったと思う」
うっとりと呟いた立香をシャルルマーニュが抱き寄せれば、嬉し気に立香もすっと身を寄せて近づく。
好きに遊ばせ見守る傍らシャルルマーニュも立香の髪へ手を伸ばす。指先に感じるのは、短いけれどさらさらと指を通る艶やかな感触だ。
「君の髪も綺麗だ」
「そうかな」
シャルルマーニュの言葉がよほどうれしかったのか、立香は頬を赤らめて照れくさそうに微笑む。髪をなでるというより頭を撫でられている状態なのもあるかもしれない。
「俺の髪、すぐ好き勝手跳ねて嫌だったんだけど」
「そうなのか?」
「うん、でもシャルルが綺麗って言ってくれるならこの髪も悪くないなって思っちゃった」
その途端、シャルルマーニュは膝の上の立香をぎゅっと抱きしめた。
自分の言葉一つでこうも喜んでくれるなんて。愛おしいという思いが湧き上がって止まらなくなる。
立香も突然の行動に一瞬驚いて慌てたものの、シャルルマーニュの抱きしめる腕の温かさに気付くと恥ずかしさを押し殺して自らもその手を首に回して抱き着く。
ぎゅっと頭を引き寄せるように力を込めれば素直に引かれて頬を摺り寄せてくれた。立香も同じように頬を寄せる。
「ふふ、やはり君の髪は綺麗だな」
「シャルルもね」
抱きしめ合ながら頬に触れた髪の感触を楽しみ、二人は同時にふっと息を漏らした。
「……ここは食堂なんだが……」
そう呟いた赤い弓兵の言葉にその場にいた全員が力なく首を縦に振った。