「ストロベリーレアチーズチョコアイスと……バナナチョコカスタードで」
「はい、ストロベリーレアチーズとバナナチョコカスタードですね。」
承りました!と元気に答えている店員の語尾にハートマークがついていると立香は思った。
癇癪を起して暴れたはいいものの引き際が分からなくなったところに提案された「クレープ奢るからそれで手打ちにしてくれ!」に立香は飛びついた。
シャルルマーニュの指さした先には建物の影に隠れていたが車の一部と看板が見える。
「じゃああの一番上の新メニュー!」
と立てかけてあった看板の一番大きく目玉にしてあった商品を告げる。
自分達のいる位置からは看板の内容は小さすぎて見えないが、一番上に大きく載った写真とNewの文字は何とか見えた。
「わかったわかった」
そう言ってシャルルマーニュは立香の頭を一撫ですると車の方へと走って行く。
恋人と言うよりも子供のように宥められたのに不満が残るが、これで怒ってしまうとますます駄々っ子にしかならない。
せめてまだ許してはいないのだと体で不機嫌な表情のままシャルルマーニュの後を追い見たのが先ほどの光景だ。
鼻歌でも歌っていそうな様子の店員にちらちらとシャルルマーニュに送られる女性たちの熱い視線。
不機嫌だったことも忘れて茫然としている間にクレープを受け取ったシャルルマーニュがやってきた。
「はい。これで許してくれよ」
少し困ったように眉を下げて笑いながらクレープを差し出す姿は誰がどう見たって理想の彼氏だろうと思う。
その考えを肯定するかのように周りからざわっと黄色い声が漏れ聞こえてきた。
立香はクレープとシャルルマーニュの顔を何度も何度も見比べる。
これを受け取っていいのだろうか、受け取るのが自分でいいのだろうか。
理性は恋人だしお詫びの品なんだから受け取ればいいとささやきかけてくるが、この王子様がこれを渡すべき相手はもっと他にいるんじゃないか、自分みたいな平々凡々な男子高校生ではなくもっと似合う相手が居るのではないかと本能が手を止めてしまう。
「立香?」
さっきまでこれで機嫌を直してもらえそうだったと言うのに、何故かクレープを睨みつけ受け取ってくれなくなった立香にシャルルマーニュは混乱する。
そんなにいじめすぎたのか!?
カッコ良いと言ってもらえるのが嬉しすぎて調子に乗りすぎたのか!?
これくらいじゃ足りない?何なら機嫌よくデートに行ってくれるんだ!?
混乱したままクレープを差し出し続けるシャルルマーニュと、受け取っていいのかと悩み動けなくなっている立香の攻防はクレープのアイスの表面がとろりと溶け始めるまで続いた。
その後。
「あまりのカッコ良さに本気で俺でいいのかって悩んじゃって」
「立香以外の誰に渡せと!?」
「なんかこう、もっと似合うお姫様が」
「いないから!いたとしても立香じゃないならお断りだ!」
「……そう言う必死のシャルル(カッコ良いけど可愛くて)好き」
「俺も好き!」