雨降って地は半ナマ※TOA後転生現学パロ
手を突然動かされた先にあった朱色。
────パクッ
「は…?」
食堂で、お待ちかねの食後のフルーツを食べようとしたシンクだったがそれは叶わなかった。あろうことか、ルークに喰われてしまったのだ。空中に浮いたように、フォークを掴んでいる手は行き場を無くした。
「ん~やっすいイチゴ使ってやがんなうちのガッコー。全然甘くねぇわ」
「ちょ、何してんのバカじゃないの普通人のデザート取る悪趣味にも程があるんだけど!」
「誰が悪趣味だ!テーブルに置いたままいつまでも食わねえから食ってやろうとしたんじゃねぇか!」
「僕はねぇっ、フルーツは食後って決まってんのバッカじゃん人の食べるとか卑しすぎアンタ貴族出身でしょ人の物は食べちゃダメも教わって無いわけ」
「んだとぉっ!」
ベチンとルークの頭を叩いたのは、ルークよりさらに上級生のユーリ。
「わりぃなシンク。坊ちゃんだから多目に見てやってくれよ」
「ユーリぃ!君は誰の頭をはたっ、叩いて…!も、申し訳ありませんルーク様!彼には僕の方からも釘を刺して起きますから!」
「いってぇ何しやがるフレン!」
生徒会長のフレンまでもが駆け寄り、幼馴染みのユーリの耳を引っ張り上げた。
外野がザワザワし始めたので、もう耐えられないとシンクはとっとと食器を下げた。その時再度フレンがシンクを呼び止めた。
「あぁ、シンク。フルーツの代わりと言ってはなんだが、僕が作ったフルーツサンドで良ければ」
「…生徒会長からの施しなんか要らないんですけど」
「まぁそう言わず。フルーツを食べ損ねてしまったんだろう?お楽しみが無くなるのは誰だって嫌だからね。今回作ったフルーツサンドは僕の自信作なんだ」
ニコニコしながら、ラップに包まれたフルーツサンド。はぁ、とシンクは溜息を付いてそれを仕方なく受け取った。
「…ありがとう、ございます」
「どういたしまして!さぁユーリ!今日は放課後徹底的に君は「うるせぇんだフレン!あだだだ」」
フレンはユーリを連れ出し食堂を抜けていった。シンクも手元のフルーツサンドを仕舞って教室へ戻った。
放課後になり、部活の準備をするため部室に向かう途中。シンクの下駄箱前にルークが腕を組んで立っていた。
食堂ではルークの振る舞いに、大人気無く声を荒らげた事を思い出してシンクは舌打ちをした。
「何か用?機嫌取りにでも?別にもう怒っても馬鹿らしいし、アンタに怒った事で、お育ちが大変宜しいから無駄だからね」
ルークは両手を打ち合わせて頭を下げていた。
「…悪かった!あの現場見てたティアやナタリア、アッシュにまでボロくそに言われちまったんだよ」
楽しみを奪われる、つまり『取っておいたチキンを先にアッシュに食べられたらどうなるかぐらい考えなさい』と詰め寄られた。確かに考えてみるとそれは死活問題で、アッシュをぶん殴るつもりに至る話だ。引き合いに出されたアッシュはティアに憤慨し、ナタリアに宥められていたが、『でも、ルークもよくお考えになってくださいませね』、や、『ファブレ家の品性を疑われるだろうが。だからてめぇは屑のままなんだよ』と言われる始末。
ここまで言われちゃあと、流石に謝るに踏み切ったのだった。
「俺とシンクの仲だろーからいいかなって…」
「嘘デショ…僕アンタと仲良ししてるつもり全然ないんだけど」
それに、生徒会長から貰った代わりがあるからもうどうでもいいと言ったが、ルークは引き下がらない。面倒くさいとシンクは半ばヤケクソに吐いた。
「もうっ!スポーツドリンク1本でチャラにしてあげるよ」
「マジでんじゃ部室に届けておくからな!サンキューシンク!」
バタバタと外の自販機に向かって行ったルーク。
「っと…バカじゃないのあの人。意味分かんない。でも…」
それを嫌ではないと思う自身にも意味が分からないとシンクは思っていた。
「有り得ないからあんなバカ男」
糖分が足りてないからこんな意味不明な考えに至るのだと、思い出したフルーツサンドを取り出して、部活前の軽食と、口に入れた。
後日、ルークがシンクに1ダースのスポーツドリンクを持って行ったのだが。
「え?食中毒?」
そこから1週間、シンクは登校出来なかったと言う。
END