ミラーリング #15-4「対決」 朝が来なければいい。
今ほど強く願ったことは、フェルディアにはなかった。
だが、そんな願いをあざ笑うかのように、空は白みはじめていた。
御者のアイドは、すでに戦車の用意を整えていた。世は無情だ。すべてが自分に戦えと強いてくる。
近づいてくる足音に気づいて、フェルディアは振り返った。
そこには、コノート王子であり、幼なじみであるメインが立っていた。
「どうした。ずいぶん早いな」
フェルディアはわざと軽い口調で声をかけたが、メインは押し黙っている。
「……わかってるだろうな」
やがて、絞り出すような声で王子は言った。その身に弓と矢筒が背負われているのを見て、フェルディアは微笑んだ。
「ああ、大丈夫さ。俺は逃げたりしない。おまえの腕は知ってるしな」
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