24キロ「――宅配便です。お荷物届いてます」
平日の真っ昼間。そのとあるマンションは宅配ルートの中にあった。
インターフォンを鳴らし、しばらくすると中から返事のようなものが聞こえ、伝票の名前を確認する。名前は、『黒子テツヤ』ここに住む男の人だ。
「すみません、お待たせしました」
ドアが開き、すっかり顔馴染みになった黒子さんがひょこりと顔を出す。
黒子さんは至って普通、と言っては失礼かもしれないが、何処にでもいそうな物腰柔らかい青年で、仕事は在宅ワークをしているらしく、荷物の指定はいつも平日の日中が多かった。
今日は寝起きだったのか、いつも以上にラフな出立ちで現れ、ぴょんと跳ねた寝癖に思わず顔が綻んだ。
「いえ、全然待ってないですよ。こちらにハンコお願いします」
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