ある日、A国兄弟はマスターに恋愛相談する★ある日、エンフィールドとスナイダーは、二人で一日の休みを取った。
「お出かけですか?」
と尋ねると、スナイダーさんが答えた。
「ああ」
「どこへ行くんですか?」
「おまえには関係ない」
「そうですね……」
「気になるのか? だったらついてこい」
「えっ」
スナイダーさんに言われて、僕は驚いた。
僕も一緒に行くなんて考えていなかったからだ。
「どうするんだ、行くのか行かないのか?」
「行きます!」
思わずそう返事をしていた。
こうして、僕たちは三人で出かけることになった。
エンフィールドさんとスナイダーさんと一緒に街を歩く。
エンフィールドさんはいつも通りだけれど、今日はスナイダーさんも機嫌が良いみたいだ。
二人で何か話しながら歩いている。
何を話しているんだろう……と思いながら、後ろから二人の会話を聞いていると、こんな言葉が聞こえてきた。
「……この前のことだけどな。俺は別におまえのことを嫌いじゃないぞ」
「……え?」
エンフィールドが足を止める。
「どういう意味だい?」
「そのままの意味だ」
「……それってつまり、僕のことを好きっていうこと?」
「違う。そういう意味ではない」
「じゃあ、どういう意味なんだい?」
「……」
スナイダーさんは何も言わない。
ただ黙っているだけだ。
「教えてくれよ、スナイダー。君は何を言いたいんだ?」
「おまえは俺にとって必要な存在だということだ」
「必要だって? それは一体……」
スナイダーさんはそれ以上何も言わなかった。
そしてまた歩き始める。
「待ってくれよ、スナイダー!
その言い方だと、まるで僕が君の役に立っているように聞こえるじゃないか!」
「そうだと言っているんだ。何度も言わせるな」
「どうしてそんなこと言うんだよ!」
「おまえが必要だからだ」
「……」
エンフィールドさんは納得していないようだった。
でもスナイダーさんが言うならそうなのだろう。
彼は嘘をつくような人ではないし……。
しばらく歩いて、スナイダーさんが立ち止まった。
そこは小さな公園の前だった。
スナイダーさんは公園の中に入っていく。
僕たちも後に続いた。
ベンチに座って、スナイダーさんが口を開く。
「エンフィールド、おまえは俺のことが好きなのか?」
「好きだよ」
即答したエンフィールドさんに対して、スナイダーさんは無表情のままだ。
「そうか。だが、俺はおまえのことが好きじゃない」
「えっ」
「それでもいいのか?」
「もちろんだよ」
「なぜだ? 理由があるんだろ?」
「うん。僕はね、君とずっと一緒にいたいと思っているからさ」
「一緒にいて何が楽しいというのだ?」
「君は楽しくないかもしれないけど、僕は君と一緒にいるだけで嬉しいんだよ」
「理解できないな」
「それで構わないよ」
「ふん……」
そこで会話が終わった。
沈黙が続く。
やがてスナイダーさんが言った。
「そろそろ帰るぞ」
「もう帰っちゃうのかい?」
「ああ。明日も仕事だからな」
「そうだよね……」
するとスナイダーさんが言った。
「おまえはまだここに残るつもりなのか?」
「うん。もう少しだけ」
「わかった」
それだけ言って、スナイダーさんが先に帰って行った。
残されたエンフィールドさんが呟く。
「ねえ、マスターさん。スナイダーが僕のことを好きじゃないって言ったとき、少しショックだったんですよ」
「そうなんですか?」
「はい。だって、あんなに一緒の時間を過ごしているわけですから、嫌われてはいないと思っていまして」
「確かに仲良しですよね」
「はい。ただ、それが恋心かどうかはわかりませんが……」
「なるほど……」
「それにしても、あのスナイダーが僕を必要としていたとは驚きました。正直なところ嬉しかったですね」
エンフィールドさんは笑顔で言う。
本当に嬉しそうだ。
「良かったですね」
「はい。これからも彼と仲良くやっていけるといいのですが……どうでしょう?」
「きっと大丈夫だと思いますよ」
「だと良いのですが……」
★それから数日後の夜。
僕はエンフィールドさんの部屋を訪ねた。
「どうしました?」
「ちょっとお話がありまして」
「なんでしょうか?」
僕は思い切って聞いてみた。
「スナイダーさんのことです」
「スナイダーがどうかしたのですか?」
「最近、彼の様子がおかしいと思いませんか?」
「そういえば、いつもより不機嫌な気がしますね」
「やっぱり気づいていましたか」
「ええ。でも、どうすればいいのかわからないんですよ」
「どうしてスナイダーさんが不機嫌になっているのか、心当たりはないんですか?」
「ないですね」
エンフィールドさんは首を横に振った。
「何かあったんでしょうか……?」
「さあ、それは本人に直接聞かないと」
「それもそうですね」
その時、部屋のドアが開いた。
そこにはスナイダーさんがいた。
「スナイダー!」
エンフィールドの顔が明るくなった。
「どうしたんだい? こんな時間に部屋に来るなんて珍しいじゃないか」
「おまえに相談したいことがある」
「相談?」
「ああ」
スナイダーさんがエンフィールドさんの向かい側に座ると、エンフィールドさんも座り直した。
そして話し始める。
「実は……俺はおまえのことを好きになってしまったらしい」
「えっ!?」
エンフィールドさんが驚いている。
「本当かい?」
「嘘をついてどうする?」
「いや、だって、そんな素振り全然見せていなかったから……」
「隠していただけだ」
「そっか……」
エンフィールドさんは少し考えてから言った。
「じゃあ、付き合おうか」
「いいのか?」
「うん。断る理由がないよ」
「そうか……」
スナイダーさんが立ち上がる。
そして僕に向かって言った。
「そういうことだ。改めてよろしく頼む」
「こちらこそ」
こうして、スナイダーさんとエンフィールドさんは恋人同士になった。
二人は幸せそうだ。
ずっとこのままの関係が続くと良いと思う。
僕は二人を応援することにした。
★スナイダーさんはエンフィールドさんと付き合い始めた。
二人の関係は良好のようだ。
数日経ったある日のことだった。
スナイダーさんの部屋を訪ねると、彼は何かを手に持っていた。
「それは……?」
「エンフィールドの日記帳だ」
「どうしてここに?」
「拾ったんだ」
「そうですか……」
スナイダーさんがエンフィールドさんの日記を持っていることに僕は疑問を抱いたのだが、特に追及はしなかった。
スナイダーさんはエンフィールドさんの日記を読んでいる。
僕も興味があったので見せてもらうことにした。
そこにはスナイダーさんに対する想いが綴られていた。
スナイダーが好きだということや、彼とキスしたいということなどが書いてある。
エンフィールドさんの本音が読み取れた気がした。
スナイダーさんはというと、真剣な表情で読んでいた。
そして、最後にこう書かれていた。
『スナイダーが好きだ』
その言葉を読んだ瞬間、スナイダーさんは動きを止める。しばらく沈黙が続いた後、彼は言った。
「エンフィールドは俺のことが好きなのか……」
「そうみたいですね」
「なるほどな……」
スナイダーさんは納得するように呟く。
そして、彼は再び口を開いた。
「エンフィールドは俺とキスをしたがっていたのだな」
「そうですね……」
「知らなかったな……」
「僕も知りませんでした……」
スナイダーさんとエンフィールドさんは付き合っているはずなのに、二人の関係はあまり変わっていないようだ。
スナイダーさんはエンフィールドにさん対して、どのように接すればいいのかわからなかったらしい。
だから、今までと変わらない態度をとっていたそうだ。
それを聞いた僕は苦笑する。
「スナイダーさん、素直じゃないですね……」
「うるさいぞ」
スナイダーさんは不機嫌そうな表情を浮かべた。
★スナイダーさんはエンフィールドさんと一緒にいることが多くなり、二人で街に出かけたりしているみたいだ。
エンフィールドさんが嬉しそうに教えてくれた。
「今日はスナイダーと一緒にカフェに行ってきたんです。すごく楽しかったですよ」
エンフィールドさんはスナイダーさんのことを話すとき、とてもいい顔をする。
見ているこっちまで幸せな気分になる。
スナイダーさんの方も、エンフィールドさんの話をするときは優しい表情をしている。
二人がうまくいっているようで良かった。
そんなある日のこと。
僕はスナイダーさんから呼び出された。
仕事を終えて、スナイダーさんの部屋に行く。
「おまえを呼んだのには理由がある」
「どんな理由ですか?」
「エンフィールドについて聞きたいことがある」
「エンフィールドさんのことについて?」
「ああ」
「何を聞きたいのですか?」
「あいつとキスをしたことはあるか?」
「えっと……」
思わず言葉を失ってしまった。
スナイダーは真剣な顔で聞いてくる。
「どうなんだ?」
「ないです」
「一度もか?」
「はい」
「ふむ……」
スナイダーさんが考え込んでいる。
しばらく沈黙が続いたあと、彼は口を開いた。
「やはり俺がエンフィールドにしてやるべきか……」
「何をですか?」
「決まっているだろう? キスだ」
「えぇ……」
またもや絶句してしまった。
スナイダーさんが続ける。
「だが、いきなり唇を奪うというのは抵抗がある」
「そうですね……」
「そこで、まずは頬にするべきだと思うのだが、おまえの意見はどうだ?」
「いいんじゃないでしょうか」
「よし。では、行くぞ」
スナイダーさんは立ち上がって言った。
「どこへ行くんですか?」
「エンフィールドの部屋だ」
「なるほど……」
「エンフィールド! いるか?」
「スナイダー? どうかしたの?」
「ちょっと用があってな」
「そうなんだ。入ってよ」
「ああ」
スナイダーさんが部屋に入る。
エンフィールドさんは不思議そうな顔をして聞いてきた。
「それで、僕に何か用かな?」
「ああ。その前に確認したいことがある」
「なんだい?」
「おまえは俺のことを愛しているのか?」
「もちろんだよ」
「ならば、なぜ他の男の話ばかりする?」
「ごめん……」
「謝る必要はない。ただ、少し控えてくれればいい」
「わかったよ」
「それからもう一つある」
「今度はなんだい?」
「キスをしてもいいか?」
「いいけど……急だね」
「嫌か?」
「ううん。大丈夫だよ」
「そうか。なら、遠慮なくやらせてもらう」
スナイダーさんはエンフィールドさんに近づき、彼の頬に触れる。
そしてゆっくりと自分の方へ引き寄せていく。
エンフィールドさんは目を閉じた。
スナイダーさんはエンフィールドさんの頬に軽く触れてから、そこに唇を重ねた。
二人の距離は離れない。
長い時間、二人はそのままだった。
やがてスナイダーさんが口を離す。
エンフィールドが目を開ける。
そして、恥ずかしそうにしている。
「これで満足したかい?」
「ああ」
「じゃあ、もう寝ようか」
「そうだな、おやすみ」
「おやすみなさい」
スナイダーさんは自分の部屋に戻っていった。
僕も部屋に戻ることにする。
翌日、スナイダーさんはいつも通りの様子だったので安心した。
エンフィールドさんは少し照れているようだ。
僕はスナイダーさんから相談を受けたことを彼に話した。
「昨日スナイダーさんから相談されたんです」
「スナイダーが相談……?」
エンフィールドはとても驚いている様子だ。
「一体、どんな内容ですか……?」
「それが……あなたとのキスについてでした……」
「えっ!?」
エンフィールドさんは固まってしまった。
しばらくして、彼は僕に向かって言った。
「そうですか……」
「はい……」
エンフィールドさんは困ったような表情を浮かべていた。
そして、小さな声で呟いた。
「実は、なかなか言い出せなくて……」
「そうなんですか?」
「はい。だから、スナイダーが行動に移してくれたこと自体は嬉しいんです」
「そうですか……」
「でも、まさかキスのことで悩んでいるとは思わなかったな……」
「それは確かに……」
スナイダーさんの行動力はすごいと思う。
彼はエンフィールドさんと付き合い始めた。
しかし、二人の関係は以前とあまり変わらないようだ。
スナイダーさんとエンフィールドさんは一緒に出かけることはあるが、手を繋ぐなどのスキンシップはあまりしないらしい。
恋人同士になったはずなのに、スナイダーさんの態度はほとんど変わっていない。
そのことをエンフィールドさんに相談されて、僕は答えた。
「スナイダーさんは素直じゃないところがあるから、そういうものじゃないかな」
「そうかもしれないですね」
「ところで、スナイダーさんとデートとかするんですか?」
「たまにはしますよ。二人で映画を見に行ったりしています」
「なるほど……スナイダーさんはどんな感じですか?」
「いつもと変わりません」
「そっかぁ……」
スナイダーさんは相変わらずマイペースなようだ。
★ある日、スナイダーさんの部屋を訪ねたら、彼は椅子に座って本を読んでいた。
「何を読んでいるんですか?」
「恋愛小説だ」
「へぇ……」
意外だと思った。
スナイダーさんは普段、本を読まないからだ。
「珍しいこともあるんですね……」
「たまには読書もいいかと思ってな」
スナイダーさんは無言のままページをめくる。
彼の様子を見て、僕は尋ねた。
「どんな話なんですか?」
「恋に悩む男の話だ」
「面白いですか?」
「まあまあだ」
スナイダーさんは淡々と答える。
本当に面白がっているのかわからない反応だった。
しばらくして、スナイダーさんは言う。
「俺はエンフィールドに告白されたときから考えていたことがある」
「何ですか?」
「あいつを幸せにしてやりたいと思っていた」
スナイダーさんの言葉を聞いて、僕は微笑む。
「いいと思いますよ」
「だが、どうすればいいか悩んでいた」
「どうしたらいいのか……?」
スナイダーさんはエンフィールドさんのことをとても大切に想っていることがわかる。
だからこそ、どうすれば彼を喜ばせることができるのか悩んだのだろう。
スナイダーさんは考えながら話す。
「エンフィールドはいつも笑顔だ。それは素晴らしいことだと思う」
「はい」
「だが、俺はあいつにもっと笑ってほしいと思う」
「そうですか……」
「どうしたらあいつに喜んでもらえるだろうか?」
スナイダーさんはエンフィールドさんのことを想っている。
彼の気持ちを知れば知るほど、エンフィールドさんのことを愛していることがわかった。
僕はスナイダーさんに言う。
「じゃあ、エンフィールドさんのために何かプレゼントしてみたらいいんじゃないでしょうか?」
「プレゼント……?」
「はい。贈り物をするだけで、エンフィールドさんはとても喜ぶと思います」
スナイダーさんはしばらく考えた後、立ち上がる。
「わかった」
「きっとうまくいきますよ」
「ああ」
スナイダーさんは部屋を出ていった。きっと、エンフィールドさんに贈るための品物を探しに行ったのだろう。
数日後、スナイダーさんは僕の部屋にやって来た。
「エンフィールドへのプレゼントを買ってきた」
「よかったですね」
「ああ」
スナイダーさんは嬉しそうな顔をしている。
彼なりにいろいろと考えた結果なのかもしれない。
スナイダーさんはエンフィールドさんに贈る品物を僕に見せてくれた。
「これを見てくれ」
「綺麗ですね……。これは?」
「ブローチだ」
「いいですね」
エンフィールドは花が好きなので、このブローチは彼にぴったりだと思った。
スナイダーも同じことを思ったらしく、エンフィールドに似合うと褒めていた。
「エンフィールドが気に入ってくれるといいんだが……」
「大丈夫ですよ」
「そうか……」
スナイダーさんは安心したような表情を見せる。
エンフィールドさんのことを大切に思っていることが伝わってきた。
その後、僕たちはエンフィールドさんの元へ向かった。
「エンフィールド」
「スナイダー?どうかしたのかい?」
「お前に渡したいものがある」
「えっ……?」
スナイダーは不思議そうにしているエンフィールドに、ブローチを渡す。
「これは……?」
「ブローチだ」
「そうだけど……」
「やる」
「僕に?」
「そうだ」
エンフィールドは驚いた顔をしていた。
そして、恐るおそるという様子で尋ねる。
「もらってもいいの?」
「ああ」
「ありがとう……」
エンフィールドはぎこちない動作で、ブローチを手に取った。
その瞳は少し潤んでいるように見える。
スナイダーは照れくさそうに言った。
「エンフィールド、お前にはいつも感謝している」
「スナイダー……」
「だから、俺からの気持ちだ」
「嬉しいよ……」
エンフィールドの目からは涙がこぼれていた。
彼は涙を流しながら笑う。
「ごめん、嬉しくて……」
「泣くな……」
「うん……」
スナイダーさんも恥ずかしそうにしていたが、エンフィールドさんのことを優しい眼差しで見ていた。
二人の様子を眺めていると、自然と頬が緩んでしまう。
これからも、二人の仲は深まっていくのだろうと感じた。
★ある日、僕はエンフィールドさんに呼び出された。
彼の部屋を訪ねると、彼は真剣な顔で言った。
「お話があるんですが……」
「どうかしたんですか?」
「スナイダーのことなんですけど……」
「スナイダーさん?」
「スナイダーは、よく無理をしてしまうんです」
エンフィールドさんは心配そうに語る。
スナイダーさんは危険な場所へ一人で行ってしまうことがあるそうだ。
そして、傷ついて帰ってくることもあるという。
僕はスナイダーさんの行動を思い出しながら言う。
「確かに、スナイダーさんは自分から進んで危険に飛び込んでいきますよね……」
「そうなんです」
「でも、それがスナイダーさんの個性だと思うので、あまり気にしないでもいいんじゃないでしょうか?」
「個性?」
「はい。スナイダーさんはスナイダーさんなりに頑張ってるんですよ」
「そうかもしれませんが……」
エンフィールドさんは不安な様子だった。
僕はスナイダーさんのことを信じるべきだと言う。
「スナイダーさんを信じましょう」
「わかりました」
「スナイダーさんも反省しているはずですよ」
「そうでしょうか……?」
「大丈夫だと思います」
「だと嬉しいのですが……。ありがとうございます」
エンフィールドさんは安心したように微笑んだ。
僕たちはしばらく話をした後、部屋に戻った。
その日の夜、スナイダーさんが僕の部屋にやって来た。
「おい」
「どうしました?」
「お前に相談したいことがあって来た」
「相談?」
「ああ」
そして、小さな声で言った。
「最近、エンフィールドが俺を見ると、悲しそうに笑うようになった」
「はい」
「理由を聞いたんだが、教えてくれなくてな」
「そうですか……」
エンフィールドさんはスナイダーさんのことを心配しているのだろう。
スナイダーさんが無茶ばかりするので、悲しい思いをしているのだ。
だが、スナイダーさんはエンフィールドさんの気持ちに気がついていない。
彼は不思議そうな顔をして言う。
「どうして、あいつはあんなふうに笑っているんだ?」
「それは……」
「知っているなら、話してくれ」
「…………」
スナイダーさんに真実を伝えるべきかどうか悩む。
スナイダーさんは僕の表情を見て、不安を覚えたようだ。
眉根を寄せて、尋ねてくる。
「言えないようなことなのか?」
「いえ、そういうわけでは……」
「なら、教えてくれ」
「わかりました」
僕はスナイダーさんに本当のことを話した。
「つまり、エンフィールドさんはあなたを心配しているんですよ」
「俺を?」
「はい」
「なぜだ?」
「えっと……、スナイダーさんは無茶をしすぎるからです」
「そうか……?」
スナイダーさんは不思議そうにしていた。
彼は自分の行動に問題があるとは思っていないらしい。
僕は苦笑いをする。
「自覚がないみたいですね……」
「ああ」
「もう少し、エンフィールドさんのことを気遣ったほうがいいと思いますよ」
「わかった」
スナイダーさんは素直に返事をした。きっと、エンフィールドさんのことが大切なのだろう
。
二人は良い関係を築いていると思う。
僕は羨ましいと感じた。
それからというもの、スナイダーさんはエンフィールドさんに優しく接するようになる。
以前と比べて、二人の距離は縮まったように見えた。
★ある夜、僕はスナイダーさんに呼ばれた。
「なんですか?」
「話がある」
「どんな用件ですか?」
「エンフィールドのことなのだが……」
「エンフィールドさん?」
スナイダーは真剣な様子で言った。
「エンフィールドは最近、元気がなく、思い悩んでいるようだ」
「そうなんですね……」
「俺は何か悪いことをしたのか?」
「えっ……?」
「お前は原因を知っているか?」
「さあ、僕にはなんとも……」
「そうか……」
スナイダーさんはそれ以上は何も言わなかった。
彼はエンフィールドさんのことを気にかけているのだろう。
その瞳からは優しさを感じた。
僕はスナイダーさんに提案する。
「エンフィールドさんに直接聞いてみたらどうでしょう?」
「エンフィールドはどこにいる?」
「自室にいると思いますよ」
「行くか……」
「はい」
僕たちはエンフィールドさんの部屋へ向かった。
ドアをノックすると、「どうぞ」と声が聞こえた。
僕たちが部屋に入ると、エンフィールドさんは驚いた顔をする。
「ちょっと、エンフィールドさんと話したくて来ました」
「話? 何の話ですか?」
「エンフィールドさんのことです」
「僕のこと?」
エンフィールドさんは戸惑っていた。
僕はスナイダーさんから聞いた内容をエンフィールドさんに伝える。
話を聞いた後、エンフィールドさんは困り果てた様子で言う。
「スナイダーが迷惑をかけてすみません」
「いえ、大丈夫ですよ」
スナイダーさんはエンフィールドさんをじっと見つめていた。そして、静かに口を開く。
「エンフィールド……、俺のせいなのか?」
「違うよ!」
エンフィールドは慌てて否定した。
スナイダーさんは困惑した様子で尋ねる。
「ならば最近元気がなかったのは何故だ?」
「それは……」
エンフィールドさんは言い淀んでいた。
しかし、やがて覚悟を決めたように言う。
「実はスナイダーと話す機会が減って寂しかったんだ」
「そうだったのか……」
スナイダーさんは申し訳なさそうな表情をしていた。
それからスナイダーさんはエンフィールドさんへ優しく微笑みかける。
「これからはもっとたくさん話をしよう」
「うん!」
エンフィールドさんも嬉しそうに笑った。
この日から、二人はよく笑うようになったそうだ―――。
END