学パロ/🟡💜「シュウ先輩ってさ、好きな人いるの?」
唐突にそう声をかけられて驚いて振り返る。声をかけてきた本人は、自分の仕事が終わったのか暇そうに窓の外を見ている。サニー・ブリスコー。僕の一つ学年が下で委員会が同じになって知り合った子だ。そして僕の好きな人でもある。そんな彼にそう聞かれて動揺しないわけがない。
「急にどうしたの?」
「別に、気になっただけ。それで、いるの?」
なるべく普通に。動揺していないよ、と平然を装っていたけれど大丈夫だったかな。僕はサニーのことが好きだった。でもこの気持ちを伝えるつもりはない。僕たちは男同士だから僕の行為を伝えても一般的には理解されない。それに伝えてサニーとの距離が離れることだけは嫌だったんだ。でも、少しだけ。いることだけでも伝えていいだろうか。震えそうな声を必死で抑えながら小さく答える。
「...いるよ」
「へぇ、どんな人なの」
「優しくて、一つ一つ一生懸命に頑張る努力家で頼りになる人だよ」
「...そんなに好きなんだ」
いつもよりも低い声。サニーの声が怒っているように感じてしまう。僕は何か不快なことを言ってしまっただろうか。不機嫌そうな表情のサニーは僕の方には目もくれずにずっと窓の外を見ている。こっちを見ていないのであれば君への気持ちも伝えられるかな?
「好き、...だよ。すごく、好きなんだ...」
「シュウ先輩にそう言ってもらえるなんて、羨ましいな」
「僕の目の前にいるけ、ど...っ!」
そう口にしてしまえば勢いよく両手で口を塞ぐ。やってしまった、言うつもりがなかったのに思わず溢してしまった。こんなわかりやすい反応してしまえばバレてしまうに決まっている。恐る恐るサニーの方を見れば真っ直ぐ僕を見つめては席を立ってこちらに近づいてくる。それに反して僕は後ろへと距離を取るように下がっていく。面と向かって嫌だとか嫌いだとか言われたくなかった。後ろに下がり続ける事も限界で僕の背中は壁にたどり着いてしまう。サニーが僕を閉じ込めるように壁に手をつく。僕より身長が高くてガタイのいい彼の中にすっぽりと埋まってしまう。眉下げて頬を染めて僕を見つめるサニー。あれ、これってもしかして...。
「それってさ、期待していいってこと...?」
「...うん」
「...嬉しい」
サニーが僕の腰に腕を回すとそのままぐっと引き寄せて抱きしめられた。それだけで僕はもう顔が真っ赤になってしまっている。ずっと片思いだった人と両思いになった。嬉しくて嬉しくて堪らなくて僕もサニーの背中に腕を回した。ちらりと僕より背の高いサニーに方へと目を向けるとすごく優しい表情で僕を見ていて少しずつ顔が近づいてくる。鼻先が触れるほど近づけば一度止まって真っ直ぐ僕を見つめてふっと微笑んで、目を瞑って顔を傾けて再び近づいてくる。ここまで来れば経験のない僕にでも何をしようとしているのかわかる。もう少しでサニーの唇が触れそうになりぎゅっと力一杯目を瞑った。
「...シュウ先輩」
触れそうになる寸前で僕はサニーの唇を両手で止めた。サニーは途中で止められたことが不満そうに僕の名前を呼ぶけれど、僕は心臓がバックバクと破裂しそうになってるので勘弁して欲しい。
「ちょ、ちょっと待って!本当に...!僕こういうの初めてなんだよ...!心臓がもたないよ」
「どうしても?」
「恥ずかしくて死んじゃいそう」
「わかった、じゃあ今日はこれで我慢する...」
少しだけ拗ねたように唇尖らせて首筋に顔を埋められて力一杯抱きしめられる。僕より身長が高くてよく格好いいって隠れて女子に人気のサニーの拗ねてる姿が可愛くて自然と笑みが溢れる。それと僕とキスがしたかったと思ってくれていたことに愛おしく感じると同時に少しの罪悪感。その時にふとある事を思い出す。顔は緊張して無理だけどここなら...と意を決してサニーと小さな声で呼びかける。僕に呼ばれたサニーはなに、っと少しだけ身体を離してまだ拗ねてますといった表情浮かべながら僕を見る。ぐっと手を握りしめて、サニーの首筋にある黒子へと僕は唇を落とした。ほんの少し触れるだけ、今の僕にできる限界。すぐに唇は離れてちらりとサニーの表情を確認すれば、サニーは驚いたように目を見開いて口を開けてる。目線だけ僕に向けてシュウ先輩...と呼ばれる。すると身体中が熱くなってくるのがわかる。あ、だめだ。これもめちゃくちゃ恥ずかしい。心臓が再びバクバクと人に聞こえるのじゃないかというぐらい大きな音を立てている。このままだと本当に破裂しちゃう、とサニーの胸を軽く押して腕の中から抜け出してはカバンを持って扉まで走る。
「今日はこれで勘弁して...!じゃ!また明日ね!!!」
「え、ちょっと...!」
サニーの静止も聞かずに僕は走ってその場から逃げた。この空間にいれば恥ずか死してしまう。普段は走ることのない廊下を僕は全力疾走した。
「...俺の方が心臓もたないよ」
サニーが耳まで赤くして、僕の唇が触れたところを手で押さえてしゃがみ込んでることなんて知る余地もない。僕は明日からどういう顔でサニーに会えばいいのか分からず、走って家まで帰ってベッドで悶えているのだから。