他人の子がいつまでも子供に見える 妙な風体の客が来た。いや、妙というのはおかしいか。別に普通だ。なんというか……そう、杖を突いているのに背筋がピンと伸びて眼光は鋭く髪は苛烈なまでに黒く、妙なアンバランスさがある男だ。大人の年齢などまだ20代になったばかりの新人バイトの俺には分からないが、50代くらいだろうか。何やら只者ではないことだけは分かる。そんな人が何を買うのだろうかと彼を注視していると、カツカツと杖を鳴らしながら本棚の間を歩き少し迷ってから学習書の本棚に向かいざっとラインナップを見回してから一冊手に取り、そのまま次は新書本のコーナーに向かう。既に目当ての本は決まっているようで、見つけ出した一冊を引き抜くとさっさとこちらに向かって「頼む」と商品を差し出した。
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