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    ぽぷろあ

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    タル鍾短文 恋人設定 幻覚強め なんでも許せる人向け

    #タル鍾
    gongzhong

    触れ合うぬくもり 爛々と輝く星空の下。鍾離とタルタリヤは、宴席の帰りに人気のない通りを一緒に歩いていた。時間帯のおかげか、人で賑わう璃月の通りも、今は静けさが漂っている。

     鍾離は隣を歩くタルタリヤを横目でチラリと見やる。日頃浮かべている笑みは引っ込み、無表情で歩く彼の姿が鍾離の視界に入ってきた。

     こちらが視線を寄こしている事なんてわかっているはずなのに、タルタリヤは沈黙を貫き、無表情で真っ直ぐ前を見たままだった。その取り付く島もないその態度に鍾離は小さく息を吐いた。

     普段なら他愛の無い話をしながら帰路につき、話が盛り上がればどちらかの部屋に転がり込む程に、穏やかな時を過ごしていた。 今回もそのはずだった。しかし、今はピリピリとした空気が漂ってしまっている。どうやら先程の宴席でタルタリヤの機嫌を損ねてしまったらしい。

     十数分前の事を鍾離は振り返る。確か、そう。タルタリヤが数日前に鍾離を見かけたという話をしている時の事。往生堂の玄関口で誰と話していたのだと、幾分かムッとした顔のタルタリヤにそう尋ねられたのだった。

     タルタリヤが言っているのは恐らく五日前の事だろうと鍾離は当たりをつける。
     その日は、講義を終え往生堂から出て散策に出掛ける直前に、聴講していた一人から質問を受けたのだ。と、言ってもほんの数分程度、質問に何度か答えた位で特に変わった所は無かったように鍾離は思う。

     それをそのままタルタリヤに告げれば、やれ近かっただの、警戒心がないなど唇を尖らせ、どんどん不機嫌になっていった。

     今いちタルタリヤの言っている事に要点が掴めず、鍾離が首を傾げていれば、分からないならいいと、タルタリヤは立ち上がった。その時は既に酒も料理も無く、そのまま本日の宴席はお開きとなってしまい、今に至る。

     あともう少し歩けば分岐路に差し掛かり、それぞれ違う方向に帰ることになる。その前にこの空気を何とかしたいと思う鍾離だが、タルタリヤが何に怒っているのか分からない状態で謝るのは悪手だろうと、途方に暮れる。

     キュッと柔く自分の手を丸める。そういえば手も繋いでいなかったな。そう考えながら指同士で磨り合わせてみても、自分の低い体温ではいつまでも温まらなかった。手套に包まれた上、寒気を覚えない体質のはずなのに、どうしてか指先が冷えるような心地になった。

     殆ど人の気配が無いこの時間帯に帰る時は、必ずタルタリヤが手を繋ぎに来ていた。誰もいないからいいよね。と、幸せそうに笑いながらそう手を取る瞬間が、鍾離は好きだ。自分と比べて高い体温が手套越しに触れて来るのが心地よくて、手も胸の裡も、その時はまるで春の日差しのように、ポカポカと温かくなるのだ。

     温度を求めて鍾離から手を伸ばそうかとも思ったが。こちらを向かない視線のように振り払われる事に怖気づいて、伸ばせずにいる。

     こんな時はどう対処するのが正解なのだろう。恋愛の機微に疎い鍾離は静かに落ち込む。あと数歩で分岐路に辿り着いてしまうが、いい案は思い浮かびそうになかった。

    「それじゃあ…俺はこっちだから」
    「…ああ」

     道が分かれる手前で二人は立ち止まる。ようやく鍾離の方に向いたタルタリヤは、いつもと比べて歯切れが悪そうに小さく呟くようにそう言った。身体はこちらを向いているのに、視線は背けられて交わらない。もやもやとしたものが鍾離の胸に渦巻き、それがつかえて鍾離も返答が小さくなってしまった。

    「…またね、先生」
    「………。」

     決まりが悪そうにそう言いながら、くるりと反転してタルタリヤは立ち去る。今度は言葉を返さず、鍾離はぼんやりとしながらそれを見送った。

     が、足を踏み出したはずのタルタリヤが何故か急に立ち止まった。その上、驚いた顔をしながらバッと素早くこちらを振り向き、目を見開いたタルタリヤと十数秒ほど見つめ合う形となった。異様な静けさの漂う中、先に我に帰ったのはタルタリヤの方だった。

    「……先生?この手は一体…?」

     そう言うタルタリヤの視線の先を鍾離も辿れば、タルタリヤの手を掴む己の利き手が見えた。どうやら無意識に掴んでしまったようだ。視線を下げ、手を繋いだまま口を開こうとしても、普段通りに言葉が出て来ずにはくはくと空気だけが吐き出されていった。諦めて掴んでいた手から力を抜いて離し、緩慢な動作で戻そうとした。…けれど。

     その前にタルタリヤが鍾離の手を取った。手套越しに触れる温かさにホッとしつつも、タルタリヤの意図が理解できなくて戸惑いが勝った。握られた手を、握り返すことが出来ずに指先が彷徨う。

     そうやって下を向いて鍾離が戸惑っている間に、タルタリヤが歩き出し手が自然と引っ張られ抵抗せず鍾離はそのまま続く。向かう先は鍾離の帰る場所とは逆方向。
     
    「…公子殿?」
    「あー…その…ごめんね」
    「…?何故、公子殿の方が謝る?」
    「えっ!?ああ、うん…色々とね?…ただ、嫉妬してただけなんて言えないし」

     最後の方が聞き取れず、首を傾げながら先導するタルタリヤの後頭部に視線を投げる。今度は振り返ってくれた。視線が交じり合い、苦笑いを浮かべた優しい眼差しにようやく鍾離の胸につかえていたものが取れた。

     少し足を早めてタルタリヤの隣に並ぶと、一度手が離れてすぐに繋ぎ直された。今度は指同士が深く絡み合う。

    「今更言うのもなんだけど、先生さえよければ俺の部屋で飲み直さない?この前、故郷から色々送られてきてさ」
    「ああ、それは楽しみだ」

     鍾離が力を込めれば同じ位の力で握り返される。

     それが何よりも嬉しかった。
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