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    hjm_shiro

    @hjm_shiro

    ジャンル/CP雑多

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    hjm_shiro

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    蜂潔/朝を撫でる
    ⚠監獄を出たあと/プロになってる設定

    みんなと朝まで飲んでた二人が、一緒に仲良く電車に揺られて帰る話。帰る方向も使う路線も違うのに、潔と同じ電車に飛び乗ってきた蜂楽くん。

    #蜂潔
    #bcis
    #ばちいさ
    fieldLatitude

     朝焼け色に染まったホームに電車が滑り込んでくる。潔はふわっとひとつあくびをすると、後ろに立つ蜂楽に軽く手を振った。

    「じゃあな、蜂楽」
    「うん、潔。バイバイ!」

     朝に相応しい、さっぱりとした笑顔だ。ほんの少しだけ眠そうではあるものの、蜂楽も同じように手を振り返してくれる。
     今ここで蜂楽と別れたら、また暫くはこの笑顔を見られなくなるのだろう。そう思うと、途端に腹の底がずんと重たくなった。もう何度も繰り返しているさよならなのに、この瞬間に味わう寂しさだけはいつまでたっても慣れない。


     朝を撫でる


     蜂楽とこうして再会するのも、そしてさよならをするのも久しぶりだった。二人とも数年前にブルーロックを卒業しており、いまはそれぞれの所属チームで切磋琢磨しているからだ。
     なお、そのときに出会った他の仲間たちも同じようにプロ入りを果たしており、忙しい日々を送っている。それでもオフシーズンにはメンバーのみんなで予定を合わせ、日頃の節制を忘れて朝まで飲むのが恒例だった。だから、こうして蜂楽と再会し、別れ際に手を振り見送られることも、片手では数えきれないほど繰り返している。だというのに、いまだ寂しさが募るのは、きっと蜂楽に対して並々ならぬ感情を抱いているからだろう。
     友情を超えた何か。恋心と呼ぶには煮詰まり、擦り切れすぎた想いが潔の後ろ髪を引く。

    「なぁ、蜂楽」
    「えっ、」
    「……ごめん、やっぱりなんでもない」

     ふいっと顔をそらし、呼び止めた事実を無かったことにする。
     だが、いつもは振り返ることなく電車に乗ってしまう潔が振り返ったことにびっくりしたのだろう。蜂楽は目をぱちぱちと瞬かせると口角を上げた。

    「えい♪」

     突然、ぴょんと電車に飛び乗ってきた蜂楽に、は!? と素っ頓狂な声が出る。早くしないと閉まっちゃうよ! と手を引かれて、潔も急いで電車に乗った。その直後、扉が閉まる。

    「お前、なんで、」

     方向が違う。乗る路線が違う。言いたいことは山ほどあるのに、口がうまく回らない。
     蜂楽は潔の手を引くと、空いているシートに座った。始発の、それも下り電車のため、人は疎らにしか乗っていない。だからシートどころか、ほとんど車両丸々、二人で貸し切っている状態だった。
     蜂楽はギュッと手を握ったまま、窓の外を眺めている。その横顔をどこか現実味を帯びないまま見つめていると、蜂楽が薄く口を開いた。

    「……ねぇ、潔。このまま、二人でどっか行こっか」
    「はぁ!? 行くってどこに……っていうか、なんでお前、電車に乗ったんだよ」
    「なんで、って、潔の顔が寂しそうだったから」

     シートの上、握られた手の甲をすりすりと撫でてきた蜂楽に何も言えなくなる。「離れたくない、って顔してた」とまで言われたら、もう顔すら上げられなくなった。だって、ぜんぶ心の中で思っていたことだ。

    「このままだと、潔の家まで行っちゃうね」
    「それはダメだ!」
    「なんで?」
    「なんで、って」

     なにか、良からぬことが起こりそうな気がするから。離れたくないという気持ちを汲み取り、こうして手まで握って電車に飛び乗ってくれたのだ。こんなの、期待しない方がおかしい。ひた隠しにしておきたかった気持ちが、喉元までせり上がってきているのが自分でも分かる。

    「んー、じゃあ、俺んちにする?」
    「それはもっとダメだろ」
    「ダメかー」

     残念、と言う割に残念そうではない蜂楽が肩に寄りかかってくる。数時間前まで飲んでいたアルコールの匂いを引っ提げて、蜂楽が甘えるように額を肩に押し付けてきた。

    「じゃあさ、どうやったら俺のこと持ち帰ってもらえる?」

     あ、俺が潔を持ち帰るのでもいいんだけど。と言った蜂楽にたまらずゲホゲホと噎せる。何言ってんだ、と思ったが、意味を理解した瞬間、一気に手のひらが湿った。

    「ありゃ? そういうことじゃなかった?」
    「バカ……! そもそも俺たちは」

     ただの友達だろ、と言う声が萎んでいく。友達で相棒。それ以上の名前なんかつかない。

    「だったら、それ以上になればよくない?」
    「でも、俺たち男同士だろ……」
    「それって人を好きになるのに関係ある? お互いに好きって気持ちがあるだけじゃダメなの?」

     ぎゅうっと強く手を握られて、蜂楽が答えを促してくる。
     普段は天真爛漫で、何も考えてなさそうなくせに、こういうときだけは容赦なく本質を射抜いてくる。真っ直ぐにこちらを見つめる目が、心の奥底を見透かそうとしているみたいだった。

    「うっ……。まぁ、家……に、来るのはいいけど……寝るだけだからな……!」
    「やったー♪ ありがと、潔! ていうかさ、その言い方だと二重の意味にもとれちゃうよ」

     潔のえっちー、と小声で耳打ちをしてきた蜂楽にハッとして口を噤む。居ても立っても居られなくなって、たまたま開いたドアから出ようとしたら、だーめ、と手を引かれてシートに戻された。やっと潔が振り返ってくれたんだから、と呟く蜂楽の声は柔らかい。

    「ずっとね、潔とバイバイするとき、振り返ってくれたらなぁ、って思ってたんだよ」
    「そうなのか……?」
    「うん。潔が振り返ってくれたら、俺と同じように寂しいって思ってくれてたら、迷わず電車に飛び乗るのにって」

     だから、やっとだね。と笑う蜂楽の頬を眩しい朝日が撫でていく。

     どうやら互いに夢見た朝は、手を伸ばせばすぐ触れられるところにあったようだ。
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    hjm_shiro

    DOODLE凪玲/【最新】nagi_0506.docx
    ⚠監獄内の設定を少しいじってる

    凪に好きなものを与えて、うまくコントロールしているつもりの玲王と、いやいやそうではないでしょ、って思ってる周りの人たちが思わずツッコんじゃう話。
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    「たまにレオってすげぇなって思うわ」

     千切がぽつりと呟く。千切は本場よろしく油でベチャベチャになった魚――ではなく、さっくりと揚がったフィッシュフライをフォークに突き刺すと美味そうに頬張った。玲王としては特に褒められることをしたつもりはないのだが、ひとまず適当に話を合わせて、そう? と軽く相槌を打つ。

     新英雄大戦がはじまってから、選手たちは各国の棟に振り分けられている。それぞれ微妙に文化が異なり、その違いが色濃く出るのが食堂のメニューだった。基本的には毎日三食、徹底管理された食事が出てくるのだが、それとは別に各国の代表料理も選べるようになっていて、それを目当てに選手たちが棟の間を移動しに来ることもあるほどである。今日はフィッシュ&チップスと……あとはなんだったかな、と思い出しつつ、玲王はナイフでステーキを細かく切った。そうして隣にいる凪の口にフォークを突っ込む。もう一切れ、凪にやろうとフォークにステーキを突き刺したときだった。千切の隣に見知った顔ぶれが座った。
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