隣にいるから 埃臭く、ささくれ軋む木製の床。
少し空いた窓からは、騒がしい声と陽の匂いのする風が吹き込む。
「ふ、ゔっ、ああ!」
苦しげに吐き出される熱い息に、ほんのり桃色に色付いた焼けた肌、晒されたくびれはゆらと揺れる。上気した赤褐色の瞳に溜まる薄い涙膜は、微かな光を反射していた。
「誰が使うか分かんないもんに擦り付けて
…変態じゃん」
意地の悪い言葉とは裏腹に、ちょっかいを出す指はあくまで優しいもので、その双瞳にはじとりと熱が纏っている。
「っ!ん、、、ぅ」
「鍵掛けてないし先輩にも後輩にも見られちゃうかもね」
「は、うるさ…!」
普段ならば身を竦ませるほどのリョータの鋭い眼光も、快楽に身を落とさないよう気丈に振る舞うその姿から、見る者の理性を焦がすだけである。
「リョータさぁ、何回も盛られてるんだからそろそろ自覚したほうがいいぜ
心配してんだよこれでも」
リョータが“いやらしい薬”を盛られるのは今回が初めてではない。差し入れに、調理実習の料理に、それを染み込ませたハンカチで口元を塞がれたり、派手な時は頭から浴びせられたりもした。手を替え品を替え、なんの恨みがあるのやら執拗に狙われているのである。それらに屈するのは気に食わないと、真正面から立ち向かって行くのだが、薬の耐性などあるわけが無い。毎度の如く、分からされ、そばに居る事が多い沢北が処置を施しているのである。初めは男のブツを触る事に抵抗はあったものの、高校生らしからぬ、きちんと手入れのされた滑らかな肌に魅了され、今ではリョータが薬を盛られる時に近くにいるのが自分で良かったと、人知れず天運にまで感謝している。
「………ら」
「なんて?」
ふるりと震える肩を撫で、その横顔を隠す薄茶色をかきあげると、はくと喘ぐように言葉を紡いだ。
「ッふ、お前が!助けてくれるから!」
「は?」
「も、いいからさわれよぉ…!」
縋るように、懇願するように、沢北の首を引き寄せる。離すまいと力の入っている腕があまりにも健気で、ゆると表情が崩れていく。
かわいらしい仕草に誘われるがまま、無防備に差し出された、そのぽてりとした唇を食んだ。