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    ゆまさん。

    らくがきと鬱

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    ゆまさん。

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    気分が乗らなくて放置してるヤーツ(テキストてすと)

    パリーンッ
     遠くから何かが割れる音が屋敷の中に響いた。
     この屋敷の主である宿儺は書庫の整理をしているところだった。音の発生源は恐らく台所だろうと推測し、作業の手を止め、その足を台所へと向け歩き始めた。

     問題の場所へ行くと、そこには小さな子供がこちらに背を向けて突っ立っていた。
     「何をしている」
     宿儺がそう声をかけると小さな肩がビクッと跳ね上がり、まるで油を差していないブリキの玩具のようにぎこちなくこちらへと振り向きながら「…ぁ、」と小さく声を漏らした。
     振り向いたその顔はとても青褪めていて、ただでさえ小さな身体が更に小さく見える程に恐縮していた。
     その子供─伏黒恵の足元を見ると一つの湯呑みが床の上で割れていた。先ほど書庫まで聞こえた音の正体はこれだろう。
     「…ご、ごめんなさい……。お、俺、宿儺にお茶淹れようと思って、いつも使ってる湯呑みを出したら手が滑って……、落とし、ちゃった………」
     伏黒はとつとつと経緯を話し始め、最後の方は事の重大さを再認識したのか声量はすぼまり言葉尻は震えていた。
     なるほど。伏黒から語られた経緯を理解し、内心でそう一人ごちた宿儺は割れた湯吞みの傍に歩み寄り、その場にしゃがみ原型を失った湯呑みを眺めた。
     割れた湯呑みは真っ二つではなく思っていたより粉々に砕けていた。割れた破片が大きければ接着剤などで修復を試みようかと考えていたが、ここまで細かく破片が飛び散っている様を見る限りでは修復をするより買い直した方が断然早い。生憎、この屋敷にある湯呑みはこれだけではない。敢えて買い直さずとも他の湯呑みを使えばいい。特段、この割れた湯呑みに拘りなどはない。使い、洗って乾かしたあと食器棚に仕舞うと必然的に手前に置くことになる。そうなるとわざわざ奥の物を使うより手前に置いてある物を取り出して使うのが楽でそれが習慣となっていただけのこと。所詮その程度の物なのだ。
     使い道がなくなった以上、捨てるためにはまず片づけなければな、と片づけることへの手間が脳裏を過ぎり宿儺は一つ溜息をついた。その溜息に傍に立っていた伏黒は、宿儺が怒り、茶すらをまともに淹れられないことへの呆れが孕んでいると思い込み、ビクッと身体を震わせた。
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