光のお隣さん/第四話「グ・ラハ・ティアさん、20歳」
土曜の正午、やや曇り。引き戸の外は休日の人出で賑わっており、静かな店内で交わす会話は、クラクション一つで掻き消される。そのせいで若干普段より大声になってしまっているが、目の前の青年に萎縮した様子は見られず、安堵した。ただでさえやくざな商売であるから、印象は好く保ちたい。
いつもは調え、磨くばかりで、就くことはないテーブル席には、先ほど淹れた二人分の茶が、仄白い湯気を立てている。当然、開店前である。シャッターも半分しか開けていない。
「はい。よろしくお願いします」
赤毛の頭を下げる彼は、アルバイトの面接に訪れてくれた、志願者だ。ここ最近の多忙に参り、倒れる前に駄目元でと店先に貼り紙をしたところ、即日で飛び込んできてくれたのだ。それも電話でなく口頭で。昨夜の営業中、当然ながら酔客で埋まる店に来て、表の貼り紙を拝見しました、面接の機会をいただけませんか、と自分に訴えかけた姿は、いっそ勇敢ですらあった。
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