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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アキデン♀の転生現パロ小説。3話目。
    注)デ先天女体化。
    先生と生徒。保護者と被保護者。

    アシンメトリー・メモリーズ 3アキの手を取ってその青い瞳を見た瞬間、デンジはもう初めての恋に落ちていた。

    だからデンジはアキの言葉に一も二もなく頷いて、そのまま彼に着いて行った。もともと"あしながおじさん"を一目見たら好きになる自信があったが、その直感は間違いではなかったのだ。

    アキの家は、シンプルですっきりと片付いていた。妙に懐かしい感覚のする部屋だった。
    家に着くと、アキは「痛かったな」と静かに言い、清潔だけれどブカブカなアキの服に着替えさせた後、デンジの怪我の手当てをした。服を脱がなければ手当てできない部分は、「悪いが自分でやってくれ」と申し訳なさそうに謝った。デンジのことを気遣ってそうしているのに謝るアキがおかしくて、デンジは「手紙でも思ってたけど、アキっておもしれ〰︎なぁ」と笑った。アキは少し切なそうに目を細めたあと、小さく口角を上げて笑った。デンジはその表情が、どうしようもなく好きだと思った。胸の奥がぎゅうっと痛くなるのを感じ、鼓動がトクトクと早まるのがわかった。

    そこからするりと、ごく自然に、二人での同居生活が始まった。

    「ここに慣れるまで、他は何も考えなくていい。ゆっくり休め。施設や学校への連絡は俺がする」

    アキがそう言ったので、デンジはそれにすっかり甘えてゆっくりした。誰かに甘えるなんて初めてのことだが、アキには自然とそうできたのだ。デンジは男性全般が怖かったが、アキだけは平気だった。世界じゅうの男が、アキとそれ以外に分かれるくらい、彼は特別だったのである。

    初めにコーヒーの淹れ方を教えてもらって、毎朝一緒に飲むようになった。ブラックコーヒーをドブ水みたいだと言ったら、「仕方ねえな」とアキが笑い、デンジの分にはたっぷりのミルクと砂糖が入れられるようになった。言葉少なにベランダでコーヒーを飲んでゆっくりする時間は、とても心地がよかった。
    アキはその綺麗な顔に似合わず、意外とぶっきらぼうで口が悪かった。しかしその言葉の端々や行動には、いつも優しさが滲んでいる。デンジは手紙を通して感じていた彼の人となりがその通りであったことを確認して、何度もくふくふと笑った。そうしているうちに、知らずに傷だらけになっていたデンジの心は癒されていき、皮の剥がれていた下唇は綺麗に治っていった。

    朝はアキが仕事に行き、夜になると帰って来る。デンジは毎日「いってらっしゃい」と「おかえり」を言うようになった。
    アキは教師だった。しかもこの春から赴任したばかりの、新人教師。彼はまだ22歳で、この春大学を出たばかりなのだという。今はまだ4月なので、まさにピカピカの新人である。
    デンジは、アキが自分を迎えに来るまで時間がかかった理由を悟った。彼は自立してすぐさま、デンジのところへ来たというわけだ。この家に招かれた時には既に、デンジの部屋だって用意されていたが、きっとできる限り急いで準備したのだろう。
    まだ十代だったアキがデンジを保護しようとした理由だとか、若くしてどうやって施設を手配したのかなどという謎について、デンジは何も問わなかった。必要ならばアキが話してくれるだろうし、そうでなければ知らなくても良いと思ったのである。
    デンジはすっかり、アキに全幅の信頼を寄せていた。アキが自分を大切にしてくれているのは明らかなので、それだけで十分だったのだ。

    アキは毎日、温かな家庭料理を作ってくれた。昼食は、自分の分とデンジの分のお弁当を作って置いていく。彩り豊かに詰められたお弁当を食べるのは、何だかくすぐったかった。
    野菜が小さくみじん切りされたアキのカレーが、デンジの一番の好物になった。何でも昔、野菜嫌いの家族のためにみじん切りをするようになったのだという。その家族は野菜を手掴みして、投げ捨てたのだそうだ。パワーみたいな奴が他にもいるんだな、とデンジは思った。

    彼は器用に何でもこなし、丁寧に家事をして暮らしていた。そしてデンジにも少しずつ、家事の仕方を教えてくれた。洗剤を正確にはかって、色ものは分けてから洗濯機を回すこと。掃除をするときは上から埃を落としていき、最後に掃除機をかけること。「めんどくせぇんだな」とこぼしながらも、デンジはアキの言うことを素直に聞いた。
    学校を休んでいる分の勉強も、アキは教えてくれた。もともとデンジは勉強について行けていなかったので、時には小学生レベルまで遡って教えてもらった。アキの教え方はわかりやすかったし、彼は忍耐強かった。丁寧に教えてもらえば、デンジはすぐに吸収することができた。それに頑張れば、アキが静かに笑って頭を撫でてくれるので、最高のご褒美だった。デンジはそれをして欲しいがために、昼も自習をするようになり、一生懸命頑張ったのである。
    アキはこのように、デンジに何でも教えたが、デンジの口調や男のような振る舞いについてだけは何も言わなかった。彼のそういうところが、またデンジを惹きつけて止まないのだった。


    さて、デンジがその生活にすっかり馴染んだ頃。
    ある日、アキに大切な話があると言われた。夕食の後にテレビを消し、ちゃぶ台の前で二人で向かい合う。デンジが緊張で下唇を噛むと、アキが自分の唇をトントンと叩いてそれを止めさせた。

    「唇を噛むな。そんなに悪い話じゃねえから大丈夫だ」
    「本当かよ?俺を追い出すんじゃねぇの……?」
    「俺はできる限り、お前との生活を続けたいと思ってるよ」

    デンジはあからさまにホッとした。もしかしてここを出ていくように言われるのではないかと、身構えていたのである。もはやアキとの暮らしは、デンジが最も手放したくないものになっていた。

    「じゃ〰︎、何の話?」
    「俺の働いている高校に、お前を転校させたい」
    「えっ。そんなことできんの?」
    「伝手があるからできる」

    アキは淡々と言って頷いた。またアキの謎が増えたが、デンジは気にしないことにして次を促す。

    「わかった。俺ぁそれでい〰︎ぜ」
    「そうか、良かった。今度はあんな酷い環境にならないよう、俺が目を光らせるからな」
    「そんなに酷かったかぁ?」
    「酷かっただろうが。お前は自分が傷つかないように、もう少し自衛しろ」
    「はぁい」

    お説教が始まりそうだったので、デンジは大人しく頷いた。アキは滅多なことでは声を荒げたりしないが、デンジが自分を大事にしないことにはとても怒るのだ。

    「ただ……今のところ、俺たちが同居していることが世間にバレたらおしまいだ」
    「えっ、マジで?」
    「最悪、俺は犯罪者になる」
    「そんなにかよぉ!?」

    デンジは世間の常識を知らないので、大層驚いた。こんなに大切にしてもらっているのに、アキが犯罪者になるとは何事か。

    「だが、俺はお前を守りたい。お前を法律上でも守ってやれる方法があって…聞いてくれるか?」
    「うん」
    「俺と籍を入れるっていう方法だ」
    「せきをいれる……?」
    「夫婦になるってことだ」
    「はぇ!?」

    デンジはあっという間に、林檎のように真っ赤になった。そしてそれを目撃したアキがぐっと呻いたことには、気付かなかった。デンジの頭の中はパニックで、それどころじゃなかったのだ。
    夫婦になるということは、つまり、アキのお嫁さんになるということではないか。嬉しい。そんなことがあって良いのだろうか。

    「もちろん籍は書類上だけのもの……形だけのものにする」
    「ぅあ、そうなんだぁ」

    デンジは一気にしょんぼりした。せっかく、アキのお嫁さんにしてもらえると思ったのに。俯いて眉尻を下げる。それを見たアキがまたぐっと呻いたことには、また気付かなかった。

    「……養子にできればいいんだが、独身男性が未成年の養子をとるのは、この国ではほぼ不可能だ。だから籍を入れて、俺が法律上でもお前を守れる立場になる。だが勿論、お前に結婚したい相手ができたらすぐに離縁する」

    アキはタンザナイトの青い目を、デンジにまっすぐに向けた。

    「お前はどうしたい?」

    こういう時、アキは必ずデンジの意思を確認する。"デンジの意思を尊重する"と初めの手紙に書いてあった言葉は、いつもその通りに実行された。だからこそデンジは、アキを信頼しているのだ。
    そして、デンジの答えはもう決まっていた。

    「それなら俺、アキのお嫁さんになりたい」

    こうして、二人は書類上の夫婦になった。
    秘密の夫婦として同じ高校に通う生活が、スタートしたのである。
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