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    かわい

    @akidensaikooo

    アキデンの小説連載とR18漫画をぽいぽいします

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    かわい

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    アキデン♀の現パロ小説。
    注)デ先天女体化。
    先生と生徒。保護者と被保護者。転生。

    アシンメトリー・メモリーズ 6デンジはレゼに教えてもらい、うっすらとだが化粧をするようになった。夜は安物だが、きちんと化粧水と乳液をつけて寝る。デンジはアキにもらったお小遣いをほとんど使わずにとっていたので、それを使わせてもらった。極貧生活時代には、考えられなかったようなことをしている。

    「ええっ!手入れなしでノーメイクで、この肌のキメなの!?信じられないっ!」

    レゼが騒いでいたが、デンジにはよくわからない。でも彼女のことを信頼しているので、とにかく言うことを聞くことにした。

    「デンジ君はそのままで可愛いんだから、お化粧はうっすらとで良いよ。三白眼気味で吊り目なのだってチャームポイントなんだし、少し印象を優しくするくらいで良いかな。肌はそのままで綺麗だからあまりいじらずに、軽く粉をはたくくらいで……。チークと色付きリップで血色よくして〰︎……ほら、こんなに可愛い!!傑作だよ〰︎!!」

    買い揃えたプチプラの化粧品でレゼに化粧を施してもらい、鏡を見たとき、デンジ自身も驚いた。キツめの目元の印象がやわらぎ、顔色がパッと明るくなって、まるで女の子みたいだ。

    「これが……わたし……!?」
    「ハハハハ!デンジ君面白い!!」
    「冗談を言える余裕が出たのは、良いことだね」

    吉田がまたフフッと笑ったので、デンジはお礼を言った。

    「吉田も……ありがとなあ。お前の服選ぶセンスって、すごいんだな」
    「それは私もびっくりした〰︎!私は女の子らしいファッションしか詳しくないから、助かっちゃった!」

    3人は服屋に行って、デンジが今まで着てこなかったようなタイプの服を買い揃えた。
    中でも吉田の知り合いがやっているというセレクトショップは品揃えも豊富で、センスの良い服がたくさん並んでいた。その上友達価格で購入できたので、大変助かったのである。

    「デンジ君はジェンダーレスなファッションが似合うんじゃないかなって、前から思ってたんだよね。メンズっぽい服にこういうスカートとか、ごつめのアクセとか合わせると……ほら、持ち前の良さが活かせて良いんじゃないかな?」

    吉田がてきぱきと選んで持ってくる服は、どれもデンジに良く似合った。突然女の子らしいフェミニンな服を着ろと言われても抵抗があって難しいが、これならすぐ着られるなと思うものばかりだったのだ。

    「吉田君ってほんとデンジ君のこと良く見てるよね〰︎!引くくらい!!」
    「はは、一言余計かな」

    そういうわけで、デンジのイメチェン作戦が幕を開けたのである。


    ♦︎♢♦︎


    デンジは思い切って、アキを避けるのを止めた。「顔に出るから何じゃ。どんどん出していけ!」とパワーに言われたのである。
    家でも薄くメイクをして、以前とは異なりお洒落をするようになった。

    「今日は俺が昼飯作っからよ、アキは休んでろよ」
    「……わかった」

    アキは、最近少し元気がないように感じる。デンジを拒絶してしまったことを、未だに気にしているのかもしれない。
    だからその分も、デンジは家事を頑張っていた。分担されているよりも多く掃除を担い、休日はなるべくご飯も作る。アキに習ったお陰で、ごく簡単なものなら作れるようになったのだ。それに加えて、アキの仕事が遅くなる時は料理の練習もするようにした。練習でできたものを自分の夕食にしてしまい、その後に学校の課題をこなす日々だ。

    「……うまい」
    「だろオ?お代わりもあるからなあ!」

    親子丼を一口食べて、アキはパッと目を開いた。夜の時間を使って特訓して良かったなと思いながら、デンジはニッと笑う。
    アキに喜んでもらえるのは嬉しい。そのためなら、いくらでも頑張れた。

    「……デンジ。お前さ……」
    「なんだよ?」
    「いや。何でもない……」

    アキは歯切れ悪く答え、首を振った。どうも様子がおかしいのが気にかかるが、理由がわからないのでどうしようもない。食欲はあるようで、親子丼をお代わりしてくれたのにはホッとした。
    デンジはとにかく自分にできることを頑張ろうと、気合を入れ直した。


    ♦︎♢♦︎


    「アキがいない間に片付けてやろうと思ったけど、アキの部屋って綺麗だな〰︎」

    その日、アキは溜まった仕事を片付けに休日出勤していた。その間に大掃除をしていたデンジは、アキの部屋を片付けてやったら喜ぶだろうと考えたのだが、彼の部屋は整然としていたのでがっかりした。

    「しゃーねえ。これだけ片付けるかあ」

    居間に出しっぱなしにしてあったアキの筆記用具やノートなどを仕舞い始める。最近仕事が立て込んでいるようで、こういうものが出しっぱなしになっていたり、アキが居間で寝落ちたりしていることがよくあった。新任教師は大変そうだ。

    「これは確か、ここだよな」

    アキのボールペンを仕舞おうとして引き出しを開け、しかしそこで、デンジの動きは固まった。
    そこに――あるものがあったからだ。

    「これって…………多分、指輪、だよな」

    シンプルな物で溢れたアキの机の引き出しの端に鎮座する、場違いなそれ。紺色のベロアの小さな箱には、重厚でキラキラしたリボン飾りが付いていた。
    いくらデンジといえども、知っている。ドラマなどで見たことがあるからだ。これは多分、プロポーズする時に、懐から出すやつだ。

    勝手に触っちゃ駄目だと思いながらも、それを手に取る。心臓はばくばくと煩い音を立て、耳にまで響いていた。

    ――違うかも、しれないだろ。開けたら、指輪以外のものが入ってるかもしれない。
    だから……ちょっとだけ。

    デンジは震える手で、その箱を開けた。
    果たしてその中に入っていたのは――大粒のダイヤモンドがついた、立派な婚約指輪だった。

    「……!」

    ガクッと足から力が抜け、その場に座り込む。今にも吐きそうな口もとを、片手で必死におさえた。

    ――アキ、結婚してえ人がいるんだ……。

    震える手で、指輪の箱を床に置く。机の影の暗闇でもなお、そのダイヤモンドはキラキラと輝いて、大きな存在感を発していた。視界がぼんやりしていく。

    ――アキは、この指輪を渡してえ人がいるんだ。それなのに、俺のせいで渡せねえんだ……。

    ――俺が、アキの人生を邪魔してるんだ。

    デンジの目の前は、文字通り真っ暗になった。


    それからどうしたのか、デンジはよく覚えていない。気づいたらもう、外をふらふらと歩いていた。
    指輪を元通りの位置に戻して、そっと引き出しを元に戻したのだけは確かだ。

    家の近くの河原で体育座りをして、しばらくぼうっとする。どのくらい時間が経ったのか分からないが、もう夕日も沈みかけて、辺りは薄暗くなっていた。
    デンジには、もう帰れる場所がない。これからどうしようかと途方に暮れた時、不意に後ろから声が聞こえた。

    「デンジ君?」

    振り返るとそこには、落ちかかった前髪の下で黒い目をまん丸にした吉田が立っていた。

    「よしだ…………」

    呆然としていたデンジは、知り合いの顔を見ていよいよ自分の涙腺が決壊したことを感じた。
    ぼろり、ぼろり。大粒の涙が零れ落ちる。吉田は珍しく慌てた様子で駆け寄ってきた。

    「うわ、大丈夫?」
    「よしだ、どうしよう…………あき、こんやくゆびわ、かくしてた…………。きっと、わたしてえひとがいるんだ………………」

    ぼろりぼろりと落ちる涙をそのままにして話すと、吉田は痛ましそうに目を細めて、その涙を指で拭った。
    吉田に触れられても、特に忌避感はなかった。
    ただ、今は苦しくて、陸にいるのに溺れていきそうで、誰かに縋りたかった。

    静かに、そっと引き寄せられる。
    吉田にゆるく抱き締められた。アキとは全然、違う匂い。だけど、少しだけ息がしやすくなった気がする。

    「……僕にしなよ」
    「…………よしだ?」
    「僕にしなよ。僕なら、デンジ君を泣かせないよ。どうしていつも君は、あの人ばかり見ているの……」

    吉田の声は、とても傷付いて弱っている声だった。いつも飄々としている彼の本心が、そこには滲んでいた。
    だからデンジは、そのまま全く身動きが取れなくなってしまった。知らないうちに吉田を深く傷つけていたことに、少なからずショックを受けたのだ。

    「…………よしだ、ごめん」
    「謝らないで。君の、そういう一途なところが……僕はきっと、好きなんだ。ずっと……」

    身体を離した吉田は痛みを堪えるように笑ってみせた。

    「……お迎えが来たよ。行った方がいい」
    「え…………」
    「あの人が君を探していたから、僕は協力したんだよ」

    吉田が指差した方角を見ると、そこにはアキが立っていた。
    アキは、とても険しい顔をしていた。薄暗闇で、タンザナイトがギラギラ光っている。

    「でも、俺…………」
    「ちゃんと、話し合った方がいいよ」

    吉田はひらりと身を翻して、去っていった。それと入れ違いに、アキが近づいてくる。

    「デンジ。こんな時間まで一人で、こんな所で何してた。危ねえだろ」
    「……アキ。でも、俺……帰れねえよ」
    「なんでだ。帰るぞ」

    アキは滅多になく苛々した様子で、デンジの腕をぐいと乱暴に掴んだ。そのまま家に向かって歩いていく。
    重い沈黙が、二人の間に流れていた。指輪のことを問いただせる空気ではない。

    そうしてアキに腕を引かれたまま、横断歩道を渡っていた時である。

    突然、赤信号を無視して、大型のトラックが横断歩道に突っ込んできた。

    「――危ねえ!!」

    ライトの光に目を奪われながら、デンジは咄嗟にアキを思い切り突き飛ばした。
    その反動で、自分はその場に立ち尽くすことになる。
    デンジはそのまま――トラックに轢かれた。


    あつい。
    あつい、けど。
    さむいな…………。


    次にうっすら目を開けると、アキに抱きしめられていた。必死に自分に何かを呼びかけているが、聞こえない。
    アキの顔は涙でぐちゃぐちゃで、その手はデンジの腹部を必死に押さえていた。

    鉄の匂いがする。動かない身体を叱咤して自分の腹部に手を沿わせると、ぬるりとした感触があった。血の感触だ。
    何だか懐かしく感じるのは、何故だろう。

    ――俺、死ぬのかな。

    デンジは他人事のようにそう思ったが、特に悲しくはなかった。
    ただ、泣いているアキが心配だったので、デンジは必死に口を動かした。うまく声を発せられていると、良いのだが。


    「……気にすんなよ、アキ……俺は、アキのためなら、死んでもいー……ちゃんと……好きなひとと、結婚して、幸せになれよ…………」


    デンジはなんとか、不恰好な笑みの形を作った。
    そうしてそのまま、意識を失った。

    どうか、最後の言葉がアキに届きますように。
    それだけを、願いながら。
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