あとがきと解説お読みくださりありがとうございました。
水都二次というにはゲーム内が舞台ではないし、主役2人も史実で友人なのは事実とはいえゲームでは全く絡まないし、しかも同性同士の感情重たい系だし、なにより自分が誰に萌えてるか周囲にバレバレ&フェアじゃない一人称視点ということで、作者の存在がちらついてしまうしで中々お出ししづらいと思っていたので読んでいただけて本当に嬉しいです。
歴史要素のみの人を選ばないバージョンも作ろうと思ったんですが、あくまで明末の鬱屈・閉塞した宮中で交じり合いすれ違いながら戦い続ける二人の心情が物語の主題ということに気付いたので結局無理でした。
小説は漫画と違って人物描写を丁寧にできるから楽しいですね。
なお本作ではドラマ・人間関係優先で史実にはかなり手を加えています。起こったことは事実だけど、タイミングや順番が違うみたいな。なので本作で描かれている世界はあくまで仮想の明末、信用しないでください。無双で五丈原の戦いに劉備が参戦してるようなもんです。詳しくは以下に書きました。
(歴史的な)徐光啓、袁可立という人物の思想行動業績性格はかなり作中に反映してあるので、両者を理解する一助になればと思います。
【歴史について】
(1)徐光啓と袁可立
この二人については、大分嘘をついてます。
ゲームの見た目で描いてますが二人とも60代だし、
徐光啓の追放は天啓5年5月。袁可立の朝廷帰還は天啓5年11月。
かぶってませんね…。
書き始めた時は袁可立が朝廷に帰還報告した天啓4年3月を帰還のタイミングだと勘違いしてたのでこのざまです。とはいえ焦竑や董其昌が二人の交友を取り持ったのは本当なので、袁氏が登莱に赴任する天啓2年以前に交流を持っていたものと思われます。もっと言えば、焦竑が没する1620年以前。
それから、徐光啓は礼部右侍郎ということになってますが、実はこの役職は宦官党が徐を味方に引き入れるため授けたもので、彼は宦官党への抵抗として官職につきませんでした。なので、侍郎として実際仕事をしていたわけではないです。
ちなみに袁可立も兵部右侍郎になっていますが、正式にはこの頃は添設兵部右侍郎という予備的な役職だったらしいです。
(2)登場人物の年代
焦竑は1620年に没しているのですが、袁・徐の接点を初めて持たせるのを天啓5(1625)年に設定した関係上延命させました。董其昌は生きてるけど応天府勤めで出せないし…。
また、高攀龍も天啓四年に朝廷を追放されているので実際は朝廷にいません。天啓五年に官籍除名は確か史実だったと思います(どのページで読んだか忘れた)
この二人、焦竑は徐光啓の恩師で董袁の同期、高攀龍は東林党のリーダーで袁の友人、ってポジションが便利すぎて手放せなくて……。話を自然に組み立てるのに物凄いお世話になりました。
(3)徐光啓の体調
天啓時代の徐光啓は体調崩しては引き下がりを繰り返していたんですが、その症状については「眩暈がして指が麻痺して、左手左足が動かなくなった」って記録があります。もうこれ読んでるだけでつらくなるんですが、たぶん過労やストレス性の症状なんだろうなと思って色々調べた結果、作中の描写はこの症状と近そうな過換気性症候群を参考にして書きました。
真面目で理想家で責任感が強いから精神的に病みやすいタイプだと思う。西洋文明との出会いが彼を救い一方で苦しめたというのは、常々考えていること。救いがたい悲劇にゾクゾクする