HBT(花吐き病タイムアタック) 板張りの床にぽつんと置いているやけに鮮やかな丸い何かは、拾い上げてみると一枚の花びらであるようだった。
黄色くて厚めの花びらは大きな花の一部なのだろうか、わりとしっかりとした繊維でできているらしい。
たぶんこれは本物だろう。花に詳しくない悟もなんとなくそれはわかる。
悟がその花びらを拾ったのは寮の廊下であり、傑の部屋の真ん前だった。
これだけではこの花びらを落としていった花の持ち主が傑であることを確定させることはできない。
しかし悟は最近、傑から人工物ではないほのかな甘い香りがしていることと、それからおとといこっそり傑がビニールに詰め込まれたものを焼却炉に放り込んでいる現場を目撃していたのである。
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