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    錦桂すず

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    錦桂すず

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    幻水総選挙お題小説です。
    キャロ3人分続きます

    その1:2主

    そういえば:2主「そういえば、今日ぼくとナナミの誕生日だ」

     高く積まれた書類を処理しながら書かれた日付に目を留め呟く。それまで一度も止まることなく動いていたシュウさんの手が初めてピタリと止まった。

    「もっと早く言ってくださればよいものを」
    「ここ最近バタバタしててすっかり忘れちゃってた。ナナミも話してないみたいだしね」

     穏やかに流れていたぼくたちの時間はここ最近はずっと慌ただしいものだった。そしてずっと側にいた、今はずっと遠くにいる友の顔を思い出す。

    「ぼくたち誕生日っていうものを知らなかったんだ」

     目の前の書類に判を押しながらポツリと呟く。ただの独り言で特に聞いて欲しかったわけではないけどシュウさんの動きが少し緩やかになったのを感じたのでそのまま言葉を続けることにした。

    「ジョウイが何気なく言った『明日ぼくの誕生日なんだ』って言葉に二人してすごく驚いたんだ。ぼくもナナミも生まれた日なんて知らないし、じいちゃんも記念日を祝うような人じゃなかったから」

     初めて『誕生日』というものを知ったぼくたち。生まれた日をお祝いする行事があるなんて知らなかった。そもそも僕たちは自分が生まれた日を知らない。拾われた日も知らない。「なら誕生日を知った今日を私たちの誕生ににしようよ!ね!」そんなナナミの嬉しそうな声と共にこの日がぼくたちの誕生日となった。
     ぼくたちにジョウイはたくさんのことを教えてくれた。この街のこと、国のこと、王家のこと、軍のこと。対して僕たちが教えられたのは山菜の取り方や魚の釣り方、猪の撃退法ぐらいだ。それでもお互い知らなかった世界を知ってすごくワクワクしたことを覚えてる。

    「ぼくもナナミも勉強は嫌いだったけど、3人で自分が知ってることを教え合うことはすごく楽しかった。字もたくさん教えてもらったんだよ」

     だから今こうして書類も読めるし書けるんだ。その言葉は飲み込んだ。でも「そうですか」と答えたシュウさんにはそこまで全部伝わってる気がした。

    「せっかくの祝い事ですし、この処理が終わったら姉君も呼んで休憩にしましょうか。ハイ・ヨーに何か用意させましょう」

     珍しくそんな甘いことを言ってくれたシュウさんに「ありがとう」と笑顔で答える。

     この先どんなことが待ち受けるかわからない。でもきっと次は……そう思いながらぼくは再び判を握りしめた。
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