負けず嫌い 長い鍛錬の時間が終わりテントに戻ったぼくは汗で湿った上着を脱ぎ捨て濡れた布で体を拭いた。適度な湿り気が肌の体温を奪い心地よい。
ふうと一息入れたところで視線に気づき目をやると、そこにはこちらをじっと見つめる友がいた。どうしたのかと思い見返しているとその視線に気付いた友が口を開く。
「ジョウイっていい身体してるよね」
「は?」
予想外の言葉に思わず間の抜けた声が出る。そんな僕に構いもせず、至極真面目な顔をした友はそのままこちらを見ている。気恥ずかしくなった僕は急いで服を着てから少し友を睨む。
「なんだよ突然」
「手足も長いし筋肉もしっかりついてるなあって」
「やめてくれよ恥ずかしい」
そんな僕のことはお構いなしに「リーチの差が」とか「間合いが」とかぶつぶつと呟いている。ああこれは僕を倒すためのシミュレーションしてるなと思った僕は友の頭を小突く。
「いいから早く着替えて!ご飯食べに行くよ!」
ハッとして慌てて着替え始める友を今度は僕が眺める。トンファーを武器として使う彼は肩や腕など上半身がよく鍛えられている。腕は僕より太いんじゃ無いだろうかと思わず自分の腕を見た僕に気づいた友は「負けないよ」と言ってにやりと笑った。それがどんな意味だとしても簡単に負ける気がしない僕は「僕もだよ」と笑って返した。