泣き虫な友「ジョウイは泣き虫だね」
幼かったあの日、負けて悔しくて涙を流した僕に君はそう言った。そこに茶化す意図は見えなかったけど少し恥ずかしくなった僕は「家では泣いてない」と口を尖らせて答えながら、そういえば君は涙が滲むことはあっても泣くことはあまりないなと思った。
僕が見たのはその数年後、ゲンカク師匠が旅立った時空を見上げただ静かに泣く姿だけだった。その隣ではナナミが声を上げて泣いていた。
そんな君が今泣いている。声を上げ人目も憚らず……といってもここには君と僕しかいないけど。そうさせてしまったのが僕自身であるということを思うと申し訳なくなると同時になんだか安堵してしまって僕の頬にも温かいものが流れ落ちた。一度溢れ出した想いはとめどなく流れ落ちていく。そのままニ人ただただ泣いた。一年分の想いを全て流すかのように。
ひとしきり感情に身を任せたあと、真っ赤な目をした君はふふっと笑った。
「ジョウイひどい顔」
「君だって同じだろ?」
「ジョウイは泣き虫だなあ」
納得がいかなくて言い返した僕を見ながらにやりと笑う。その顔は先ほどまでと違いいつもの友の顔だったことに僕はまた少し安堵したんだ。
少し気持ちも落ち着き移動を始めた僕たちは麓で君の軍師に会った。泣き腫らした目をした君を見て珍しいものを見たと一瞬驚いた顔をした彼は今度は僕たちが驚く事実を告げた。そして僕たちは全力で走る。その言葉を確かめるために。
その後涙で濡れひどい顔をした2人に笑顔で「「ジョウイの泣き虫」」と言われ、同じくひどい顔してるだろう僕が口を尖らせるのはまた別のお話。