芸能パロ番外編ふあ、と気の抜けた声と共に隣の乾が大きな欠伸をした。
「眠いのか」
「んー、昨日はいつもより早く寝たはずなんだけどな。寝足りないのかな……」
ボリュームのある睫毛がゆっくりと瞬く。音が聞こえないのが不思議なくらいだ、と毎回飽きもせず九井は思う。
今日は「劇場版TR」の続編ドラマ───シーズン3の顔合わせを兼ねた打ち合わせだけなのでメイクはしていないのだが、むしろ素の顔立ちを晒していることで元の美しさが際立っていた。
長机に肘をついてパイプ椅子に座っているだけだというのに、空気が違う。
「出演者は皆そうだろ。半分以上は演技が初めてでも、テレビとか舞台とか人に見られること自体には慣れてるプロばっかりだし」と乾は取り合わないが、欲目を抜きにしてもやはり彼は本人が自覚している以上に美しいのだ。
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