見知らぬあなたと街角で 不死川はショーウインドーに映る自分の姿を、上から下までじっくりと見つめた。左右に身体を動かしてみるが、黒のタートルネックに同色のジャケット、チャコールのチノパンにおかしいところはない。最後に乱れた髪を整えれば、準備は万端。硝子の向こうで最新のファッションに身を包むマネキンに背を見せると、雑踏入り乱れる交差点へ眼差しを注ぐ。
待ち合わせ相手の姿は、まだ辺りにない。腕時計を確かめれば、十時を過ぎたところである。約束は三十分だったので、当然と言えば当然か。街中でぼうっと立っているのも落ち着かず、不死川は近くの店を適当にブラつくことにした。
美味そうなパン屋の店頭販売が少しだけ気になったが、それは後で一緒に食べながら歩いた方が楽しいだろう。フルーツパーラー、雑貨屋の店先を冷やかした後で、書店へとやって来た。
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