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    こは斑ワンドロワンライ今週も開催ありがとうございます〜!
    お題「こたつ」お借りしました!

    #こは斑
    yellowSpot
    #こは斑ワンドロワンライ

    ぬくまる 秋も深まりだした頃、こはくとジュンの寮室にこたつが設置された。
     「まだ早いだろう」とか「いいなぁこたつ、うちの部屋も買わない?」だとか、様々な会話がちらほらと寮内でも成されたので斑も彼らの部屋のこたつの存在は早い段階で知ることになった。
     やがて二人と親交のある面々が部屋を訪ねるようになった。遠目に、藍良や真、茨などの背中が彼らの部屋に消えていくのを見たことがある。藍良はアイドルグッズを、真はゲーム機器を、茨は仕事用だろうか、書類の束とPCを手に扉の向こうに消えていった。
     そんな彼らの後ろ姿を見送りながら、斑は悶々とした日々を過ごすこととなった。
     斑はこはくと恋人関係にある。ユニット解散後、二人で居心地の良い距離を探っていたらいつの間にかこうなっていた。
     斑としてはこはくとの関係に名前をつけることに必要性を感じていなかったのだが、ある時こはくと出掛けた帰り道、どうにもこらえきれなくなって改めて彼に好きだと伝えたところ付き合うことになった。抱き締めてもキスをしても怒られないのでこの関係性はかなり気に入っている。こはくのことを考えると少々鼓動がうるさくなるのにはまだ慣れないが。
     さて、そんな恋人の部屋である。こたつがあって、彼らの部屋にはテレビもあって、おそらくこはくの要望でみかんもある。となると大変居心地が良いだろう。ぜひ行ってみたい。できることならばこはくの隣でのんびり珈琲なんかが飲めれば言うことはない。彼のそばにいると安心できる。茶々を入れると必ず反応をくれるのも嬉しい。少しドキドキはするけれども。
     ただ、訪ねるのにも理由が要る。少なくとも斑には必要であった。まだ「なんとなく顔が見たいから」と足を運ぶにはいまひとつ勇気が足りない。というわけで何かないかと日常生活の中でアンテナを高くして過ごしていたわけだが、なかなかその理由を見つけるのに苦労していたのだった。
     しかしついに本日、斑は見つけたのだ。彼の部屋を訪ねる理由を。
    「こはくさん、今ちょっといいかあ?」
     緊張で上ずりそうになる声をなだめつつ、努めて平静を装った。手にした雑誌と紙束が手汗で湿らないように逆の手に持ち替えた。
    「ええけど、どしたん?」
    「驚天動地! いやあ、事務所に届いたファンレターの中に君宛てのものが紛れ込んでいてなあ! ママサンタがお届けにあがったってわけだ……☆」
     入ってぇ、と気の抜けた声が聞こえたので斑は意を決してドアノブに手をかけた。続いて、「おこたあったかくて出られへんねん」と聞こえてきて思わずくしゃりと笑う。
    「そうかあ。それじゃ、遠慮なく」
     部屋の中、ひらひらとこたつの天板に頬をくっつけたまま手を振るこはくが目に入る。いそいそと斑は後ろ手に戸を閉めた。

    ─────

     ふと気がつくと、隣で雑誌に目を落としていた斑が船を漕いでいた。
     こはくは彼が倒れないよう、斑の頭を自分の肩へとそっと引き寄せた。もぞもぞと身じろぎをしたものの、斑が目覚める様子はない。そのまま穏やかに寝息を立て始めた。
    (っ……しゃ。ようやっとや……長かったな)
     こたつの中で小さくガッツポーズをした。逆の手で触り心地の良い髪を戯れに撫でてみる。指先が感じるぬくもりが、愛おしい。
     斑と恋人になれたのは良かったが、二人きりの時間はなかなか取れない。事務所も違えば出身校も違う、共通点らしい共通点はサークル程度のこはくと斑が、二人だけのまとまった時間を捻出することはここ最近ますます難しくなってきていた。プライベートにあわせて休日を取るのがそもそも難しい職業でもあるし、仕方がないことではあるが寂しいものは寂しい。そこでこはくが考えたのが、寮の中で共に過ごす時間を増やせないかというものだった。
     まだ本格的に寒さが厳しくなる前に部屋に、こたつを設置した。最初はこたつに興味のなかったジュンも、こはくが珍しくその良さを熱弁するのでその勢いに押されてくれた。小さめのこたつだったが十分だ。あたたかそうなベージュの布団は、夜に入った者の眠気を強烈に誘う。
     そうしてこはくは斑を待った。本当は何か理由を見つけて誘いたかったけれど、なかなかその理由が見つからなかった。ただ「もう少し一緒にいたいから」と伝えるには、こはくにはまだ勇気が足りなかった。恥ずかしいし。
     テーブルの上の紙束を大切に封筒にひとつひとつしまい直しながら、静かな寝息に耳を傾けた。肩にかかる重みが嬉しかった。頻繁には難しいかもしれないが、今後もこうして同じ時間を過ごせたらと思う。出会った頃よりも随分素直になった斑と話すのは楽しいし、互いに事情を知っているからそばにいても安心できる。
     そして何より、愛おしいのだ。器用そうに見えて、その実自分のこととなると途端に不器用になるこの男のことが。慈しむような瞳でこはくを見つめるくせに、少しこちらから踏み込んでやると急に慌て始める、このかわいらしい年上の男のことが。
     彼の目が覚めたら、きっと自分から言おう。なんの用がなくても訪ねてきてほしいと。一時間ほど前に扉を開けて入ってきた斑が、こはくの隣に座り込んだとき。たまたま触れ合った際、こはくは、彼の手のひらがじっとりと汗で湿っていることに気がついた。
    (おおきにな、来てくれて)
     柔らかな前髪をそっとかき分けて、首を傾けるとこはくは斑の額に唇を寄せた。
     窓の外では、この辺りで今年初となる粉雪がはらはらと舞い始めていた。
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