作戦×作戦=? 「なあ、……それまだかかるのか?」
美奈子の座席の前の席の椅子を引き、後ろ向きに腰かける。
「あ、玲太くん。もうちょっとかなぁ、何かあった?」
お気に入りだというオレンジ色のシャープペンシルをくるりと回し、ニコニコしながらボケる。……ったく。
「何か、って。あーりーますけどー? 今日一緒に帰ろうって約束してただろ?」
「あ!」思いっきり忘れてた、という表情のあと、「そだ、そうだったよね、ごめんね」と慌てはじめる。
「別に、そんな慌てなくても、いいって。ちゃんと待ってるから。」
なるべく急いで書くねと、日誌に視線を落とす。
窓から入る風がカーテンを揺らし、美奈子の柔らかな髪も揺らす。
まつ毛…長いな、頬が…桜色…唇も……
2398