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    サモ🐟

    @Samoopink

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    サモ🐟

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    ムコさんに片想いするドラちゃんのお話。
    フェルムコはもうできてる。

    【オレ、オマエの従魔やめるわ】ー オレ、オマエの従魔やめるわ。


    だってさ。
    惚れたオマエにはもう番がいて。

    毎朝「おはようドラちゃん」て抱かれた後のにおいをプンプンさせながら言われるオレの気持ちにもなれ。


    苦しいかよ…。


    コイツの作る飯が好きだし、一緒に入る風呂は気持ちいいし、撫でてくれる手は泣きそうなくらい暖かい。
    好きだ、て思ってしまった時からオレはずっと胸の奥が塞がったみたいに苦しい。

    オレの方がフェルより早く従魔になってたら……なんて可能性をグルグル考えてしまうんだ。

    魔物の世界ってさ、実力主義なんだよ。

    欲しかったら奪う。
    奪われたくなかったら全力で守る、それだけ。


    …フェルからアイツを奪うことも考えたよ。
    でもさ、無理じゃん?

    アイツ何年生きて力蓄えてるんだって話。
    レベルもステータスも桁違い。
    オレがどんなにレベルを上げてもさ、その間にも好戦的なフェルはどんどん強いやつと戦ってますます強くなりやがる。


    もう奪うことも無理なんだよ…ハハ、詰んだ。


    スイみたいな子どもの振りしてれば主は可愛いってよしよししてくれるけどさ、もう成体だって言った手前、何か無理あるんだよ。

    もうどうやったらお前に愛されるか、特別になれるか、毎日そればかりだよ……苦しいんだ。

    苦しい……。


    だからオレはオマエの従魔を、やめる。

    オマエと出会う前のオレに戻りたい。
    好きなことがこんなに苦しいなんて。

    知らなきゃ良かったよ……オマエのこと。
    知らなきゃオレは、あの森でバカな魔物やってた。
    ただの生肉をご馳走とか呼んでさ……。


    ……オマエの従魔を止めたら、オレ生きていけるかな?
    今までどうしてたっけ?
    そんなのがぶっ飛ぶくらい、オマエと出会ってから世界がキラキラ光って見えんだ。

    きっとつまんない毎日になるな。
    刺激のない、あったかみもない。美味しくねぇ肉を食べてさ……あぁ。きっとそれに慣れるまで辛いだろうな。



    …ってことをここまで一気に心の中でしゃべって、オレは目の前でニコニコしてるアイツの顔を見た。


    昼食後、さりげなく『ふたりきりで話がある』て呼び出せば、皿を洗う手を止めてタオルで手を拭きながら付いてきた。

    フェルとスイは昼寝だって言って屋敷の庭に行ったから、場所はリビングにした。

    ソファーに主が座ったのでオレは主と向かい合ってテーブルの渕に腰掛ける。

    あーあ。
    オレが話す内容も知らないでのほほんとした笑顔しちゃってさ…。

    『なぁ。オレ……』

    主のことだから寂しがってくれるとは思う。
    それが最後のご褒美だ。

    フェルには向けられたことのない、コイツの寂しがる顔…。
    それすらも嬉しく思うなんてもうビョーキだ。ビョーキ。

    『あのさ、オレ……』

    オマエの従魔、やめ……


    言いかけたところでアイツがそれを遮ってきた。

    「ドラちゃん、俺の番になってくれる?」

    いつもの気が抜けるようなニコニコした笑顔を浮かべたまま、ちょっとおつかいしてきてくれる?みたいな言い方でそんな事を言ったのだ。


    『……へ?』


    …今なんて?

    目をパチパチさせるオレの体をたぐり寄せて、アイツは胸の中でオレを抱きしめてきた。
    途端に目の前にふんわりと広がる主のにおい……オレの大好きなにおい。

    「俺ね、ドラちゃんと番になりたいんだ」
    『オマ……何、言って……』

    それはオレが夢にまで見た言葉なのに。
    実際言われてたら何で?てそれしか浮かばない。

    『だってオマエはフェルの番だろ?』
    「うん。だからフェルに朝方に相談してきたんだ。ドラちゃんとも番になって良いか?て」
    『番は生涯ひとりだけなんだぞ?』

    そう言うと主はふふふと笑った。

    「俺たち人間は違うんだ。元いた世界では確かに1人だけだったけど、この世界は重複婚が認められてるんだ。だから俺側は大丈夫というか」

    ちゃんと創造神様に確認したよ、と言う。

    「実は数日前からさ、ドラちゃんの気持ち……聞こえてた」
    『は…』

    え?

    聞こえてた?

    心の中で言ってたこと???

    主は頬を赤くさせて、俺の身体を抱きしめる手に力を込める。

    「たまに変なとこでチャンネルが繋がっちゃうみたいでさ、心の声って結構念話に混ざることあるみたいだよ……俺も…フェルに文句思ってたらバレてたし……」
    『ええーー!?そ、そんな……』

    恥ずかしい。

    恥ずかしすぎるだろ。

    好きなやつに好きってバレてたって…!?

    オレが悶々としてたのが全部では無いにしろ…張本人様に筒抜けとか…!?

    『…っ!!』
    焦って飛び立とうとしたら待って、と掴まれる。

    「ドラちゃん」
    『んだよ、恥ずかしすぎて高速で飛んでどっかの木に突き刺さってきたい!!』
    「ダメだって!危ない」

    主はオレを落ち着かせるようにポンポンと優しく背中を叩いてきた。

    「…俺、びっくりしたけど嬉しかったから」
    『へ?』

    嬉し…かった?

    オレがオマエのこと好きなのが???


    「フェルに聞いたらさ、同じ者を好きになってしまう事って野生では割とあるあるなんだってな。その時は戦って勝った方が番を勝ち取って負けた方は去らなきゃならない」
    『…そうだ。でもオレじゃフェルには勝てねぇし……第一』

    主のあたたかい手の平に包まれたまま、この温もりが好きなんだよな、と思う。
    居心地の良さというか。
    コイツの従魔になって、自分の場所が出来たことがすごく嬉しかったんだ。

    『もうオレ達仲間で…オマエの言う家族?みたいなものなのに、オマエ取り合って争ったら険悪になっちまうだろ』

    コイツを中心にのほほんとしてるこの生活が好きだ。
    皆全然違う種族なのに、笑い合って、一緒にご飯食べて、一緒に眠る。

    好きだと思うからオレはここにいる。
    それは皆もきっと同じ気持ちだろう。

    「ドラちゃんは優しいね」
    『…争ったりしたらオマエが悲しむと思ったんだ。だからオレが従魔やめて出て行こうかと』
    「それも俺が悲しいかな……ドラちゃんがいるこの生活が、家族が、俺は好きなんだよ」

    だから、と主は優しくオレを撫でた。

    「ねぇドラちゃん。俺と番になることは出来る?」

    『だから、オマエ…それ……』
    「フェルが言ってたんだ。そうなると思った、て」
    『へ?』
    「……ドラちゃんが俺の事、そういう対象にすること……」

    主は恥ずかしそうに目を伏せる。
    ほんのりと染まったほっぺたが桃みたいだった。

    「いずれスイちゃんも…そうなるって言われてさ……」
    『あぁ。それはオレも思う。スイはオマエ至上主義だもんな…。すでに、大きくなったらスイがパパになってあるじをママにする!て言ってたぞ』
    「え、スイちゃん……そ、そうなのか」

    おい、一瞬キュンてときめいた顔になったぞ主!

    「さっきドラちゃんが言ったのと同じだけど、このチームというか家族が仲間内で争ったりバラバラになったりするのは俺も悲しいんだ」

    そこで考えました、主は指を1本立ててニコリと笑う。

    「だったら皆でさ、番同士になっちゃえば、て思ったんだ。提案したらフェルは呆れてたけど、お前が良いならそれでいいって」
    『は?良いって…言ったのか?』
    「ドラとスイならば良いって」
    『マジかよ……』

    あの独占欲の塊の獣が???

    「うん。フェルも俺と同じ。皆との家族みたいな関係が好きなんだって。だから…あの、ドラちゃんが本気で俺の事…好きなら…俺はドラちゃんのこと好きだから…その」
    『わ、ストップ!!ストップだ!!』

    ちょっと待った、とオレは止める。
    こういうのはさ、抱っこされながら言うもんじゃねぇよ。
    雰囲気っていうかさ…。
    雄としての体裁とかプライドとかあんだぞ。

    オレは主の腕から抜け出し、ほっぺたに手を添える。主のほっぺたってさ、前に食べさせて貰ったモチって食べ物に似てる気がする。
    柔らかくて弾力があって気持ちいいんだ。

    主は俺の意図することが分かったようで、いっそう頬を染め、戸惑うように目を泳がせた後、やがて落ち着いて黒い瞳でオレを見た。

    オレもとりあえず落ちつけ。
    深呼吸しろ、オレ。

    頭の中でコイツにカミングアウトするなら、て何回も想像しただろ。
    何を言うかとかさ……あぁ。でも急すぎて真っ白だ。

    はぁ…。
    何で準備させてくれねぇんだよ。
    かっこわりいことになったらどうすんだ。


    『…体格差とかあるけどよ……でもオレが心臓速くなったり苦しくなったりすんの、今まで生きてきてオマエだけなんだ。…好きすぎて苦しいんだよ』
    「…うん」

    今だってそうだよ。
    胸の中で、テンション高いときのスイみたいに心臓が跳ねてどっか行きそうだ。
    痛ぇし苦しいよ。

    主の頬に自分の顔を擦りつける。

    好きだ…。

    『オマエの事が好きだ。オレの番になってくれよ……ムコーダ』

    もうストレートでいいや。
    恥ずかしいし、コイツだけに聞こえれば良いし、囁くような声になった。

    触れた頬がじんわりと熱くなってきて、主の手のひらがオレの体を包んだ。

    「あ………名前……」
    『嫌か?今だけ許せよ』
    「ううん、嬉しい。ドラちゃん。俺、番になるよ」
    『…マジか』
    「うん。…ドラちゃん、大好きだよ」
    主の唇がそっとオレの口に触れた。

    …これ、知ってる。

    キスって言って、人間の愛情表現だって。
    それをフェルに教えているのを見たんだ。

    …あぁ。気持ちいいな。
    苦しかったものがどんどんぬるま湯みたいな心地よさで溶けていく気がする。

    唇を離した主は照れくさそうに笑っていた。

    「番になっちゃったな」
    『フェルに報告すっか。どうせ良い耳で聞いてるんだろうけどさ』

    ドラちゃんと指を差し出されたのでそっと繋ぐ。
    そうしてふたりでゆっくり進む。

    オレと主との間には何か甘い空気が流れてて、
    おさまったはずの心臓がまたドキドキ動き出した。
    でも苦しくない。
    これは幸せなドキドキ。

    これからこんな事が沢山あるんだろう。
    番としての甘い夜もあるかもしれない。

    それを思うとオレは嬉しくてにやけるのがとまらなかった。








    おわり。
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