fondles the loved one01「うー。寒ぃー」
真冬の朝。出勤するまで見ていたニュース番組の天気予報で、本日は今年一番の冷え込みと言っていたのを思い出す。セトは首に巻いたキャメル色を基調としたチェックのマフラーに顎を埋める。鼻の頭は少し赤く、セトの寒さを物語っていた。
大学を卒業して会社勤めをするようになって十数年。こうして毎朝電車を使って通勤しているセトが、そろそろ自家用車通勤も視野に入れようかと考えていた時。
「叔父様!」
人混みを掻き分けてこちらにやってくる一回り大きい人物。真冬でありながら、キャップの上に青のパーカーを被った男子高校生は、セトの良く知る人物だった。
「ホルス……?」
兄の息子で、セトにとっては甥に当たるホルス。家も比較的近くで兄夫婦以上に頻繁に逢う仲だ。
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