あたたかい手。最後に誰かと手を繋いだのはいつだっただろうか。優しい声。最後に言葉を交わしたのは誰だっただろうか。少年に手を引かれ、少女はそんなことを考える。
「ここがおれん家、ちょっと狭いし散らかってるけど、まあゆっくりしてってくれよな!」
屈託のない笑顔でそう言われ、顔を上げる。散らかっているとペトロは言うが、塵ひとつないほど片付いている。成り行きで着いてきてしまったが、やはり見ず知らずのイカの家に上がり込むなんて。
「あ、あの……私、やっぱり……」
「何言ってんだ、いいからほら、入れって!ああ風呂はそこな、洗面所の前。後で服とタオル置いとくから入ってきていいぜ」
クレイの言葉を遮り、ペトロは半ば強引に彼女を玄関に押し込んだ。言われるがまま、風呂場に行く。ペトロはクレイが風呂場に向かったのを確かめると、そのまま奥に引っ込んでしまった。
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