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    kazuneko_611

    @kazuneko_611

    どうにもならない子達の行き場……になる予定

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    kazuneko_611

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    これは去年の夏に書いた耕黒…

    日没……「日が短くなってきたな」

    オレンジ色に染まった海岸で耕さんは唐突に言った。
    確かにそうだ。
    たぶん、もう少しで夏は終わる
    夏が終わったら
    店の3周年
    そしたら、ハロウィン公演
    クリスマス公演
    年越し...

    あ、1年終わった

    これじゃあ、結局去年と変わらねぇ
    別に変化を望んでいる訳では無いが…
    あぁ、でも今年は...

    「なんだ、また店の事考えてんのか?」

    少し前を歩いていた耕さんが振り返りながら聞いてきた
    夕焼けが、眩しい

    「別に...ただ、晶の野郎がうるさそうだなって考えてただけだ」

    「ほぉ、俺といるのに晶のこと考えてたんだな」

    「そうゆう訳じゃねぇよ」

    「せっかく2人で夕日見に来たんだ、店の事は今は忘れろ」

    なんだよ、結局お見通しかよ...

    なんだかバツが悪くなって下を向いて歩く。
    波が行ったり来たりしながら
    足元の砂を攫っていく
    耕さんに言われて靴を脱いだけど、この感覚嫌いじゃない。

    ふと、振り返れば脱ぎ捨てた靴は遠くもう見えなかった
    だいぶ歩いたな


    このまま......
    このまま2人でどこか知らない所へ行けたら…
    どこか遠くの場所へ…
    店のことも忘れてしまうくらい遠い場所…


    あぁ、ダメだ
    最近ずっとこんな調子だ
    よくわかんねぇことを考えて
    結局正体もわからず
    “よくわかんねぇ”が大きくなるだけだった
    なんでこんなこと考えてんだよ



    せっかく耕さんと2人なのに............



    「おい、黒曜」

    「…」

    「こーくよ」

    「ぁ、あぁ...わりぃ」

    「は〜、ったく」

    耕さんは呆れたような声を出しながら
    俺の頬を優しく撫でた
    その顔は酷く優しい表情をしていた

    「?…、耕さん?」

    「まだ、歩くか?」

    それは、、

    「俺はお前が望むなら、どこまでも付き合うぞ」


    なんと返せばいいかわからない
    俺はそれを本当に望んでいるのかさえもわからない
    俺がYESと答えたら耕さんは付き合ってくれる
    だけど、それはきっと逃げるって事と同じだろう

    答え方がわからないまま無言を貫いていると
    耕さんは言った

    「ふ、困らせちまったな悪ぃ悪ぃ」


    あ、耕さんの手が離れていく…
    待って…もう少しだけ…


    「耕さん!」

    「ん?なんだ?」


    しまった、名前を呼んだのはいいが
    何を伝えたいのか、上手く言葉にできない…

    あ、でもひとつこの海岸を2人で歩いている間で
    わかったことがある



    「今年の夏は耕さんがいる」


    来年も、その先も、
    なんてのは俺の我儘だ


    「あぁ、来年も、その先もな」


    俺はその答えに酷く安堵した――



    ―――――――――――――――
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