それはまるで嵐のような井戸の中の異世界から帰還して数週間がたった。
こちら側に帰還したばかりの頃は向こうの世界のあまりの惨状に精神的にも辛い思いをした仲間も多く、中々異世界での話を口に出す事も出来ない状態ではあった。
それでも時が過ぎていくと各々自分達の中でその時の辛く苦い気持ちを消化していき、忘れてはいけない大切な事は胸に抱えながらもいつもの様な日々を取り戻しつつあった。
そんな中、久しぶりにフォガート達ソルム王国の面々が宴を開くとのことでスタルークもフォガートが折角声をかけてくれた事もあり宴に参加する事にした。
宴はフォガートとパンドロが計画を立てる事が多く、ソルム王国内の集落で行われることが多かったのだが今回はきっと異世界での事があったからだろう、ソラネルの広場で仲間や兵達を招いた内輪だけの宴で少しでも話をして張り詰めていたものを解す事が出来たなら…という彼らの優しい気遣いが見えるようだった。
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