夏の逃避行 2日間も休みが被ったことだし、遠出でもしようとどちらからともなく言い出した。行きたいところがあるわけでも、やりたいことがあるわけでもなかったから、話し合いは随分ぼんやりとしたスタートになった。それすら楽しいと思うのはなぜなのか。結局のところ、こうやって顔合わせて過ごせるならなんだっていいと思ってしまう。
どうせなら車借りて、ドライブがてらどっか行くのはどう?そう提案すると紬さんは「いいね」と笑った。
「でもそれなら、近場がいいな。俺、運転できないし……」
「俺がするんだから良くね?」
「万里くんが運転するからこそだよ」
そう言いながら、紬さんは関東近郊の観光地を次々に挙げていく。免許を持たない紬さんは車での所要分数を把握しているわけではないため、いちいちマップを確認して「意外と時間かかる」「ここだとすぐ行けるね」などとぶつぶつ言っている。
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